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「夢を与える」
  綿矢りさ



チャイルドモデルから芸能界へ。幼い頃からテレビの中で生きてきた美しくすこやかな少女・夕子。ある出来事をきっかけに、彼女はブレイクするが…。成長する少女の心とからだに流れる18年の時間を描く待望の長篇小説。 (「MARC」データベースより)



子供の頃からCMキャラクターとして人に知られていた夕子。
成長するにつれて、その清楚な美しさから、徐々に人気が高まり、売れっ子になった彼女の行く末は・・・。

冒頭は、母親と父親の話から始まります。
まだ若い著者が、どうして、30を超えた女の恋愛を描くのかと思っていると、それは、その娘として生まれた夕子の18年間の物語の序章となるのでした。

その後は、夕子がキャラクターとなるチーズのCM同様、まるで夕子の成長過程を追うアルバムのように、彼女の生活を描き、その時々に出会った人々をさらりと描いては、流してゆきます。
あまりにも、それらが淡々と流されてゆくので、何を描こうとしているのか、途中、疑問でした。

思春期を迎え、恋を知った夕子に起こった出来事は・・・。
あまりにも、通俗的な、想像した通りの夕子の挫折でした。
大人はみんな知っているけれど、若い本人だけは、分からない、分かろうとしない結末・・・。

読みながら、若くして、有名になってしまった著者の姿が、夕子に重なります。
そして、今まで、有名になっては消えていったたくさんのアイドルタレントたち・・・。
先日、何かの記事で、上戸彩も、母親との葛藤や、仕事のことなどで、枕は、涙のシミだらけになってしまったと告白していましたが、思春期を過酷な芸能界で過ごすというのは、そういうことなのでしょう。
夕子は、「夢を与えるとは、他人の夢であり続けるということ」と、結論していますが、それは、所詮無理なこと。夕子は、まじめだったがために、羽目の外し方を、間違えてしまったような気がします。

夕子の挫折と、両親の破綻で、ラストは、たどり着くべきところにたどり着いたという感じでしたが、途中が、ダラダラ感があって、長かったです。長編小説というには、内容的に物足りない気がしました。 (2007.11.09)