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「死者のための音楽」



  山白朝子
これは愛の短篇集だ。 怪談専門誌『幽』の連載で話題沸騰の大型新人、待望の初単行本化
怪談専門誌『幽』2号から7号までに連載された6篇の怪談短編に、書き下ろし作品を加えた愛と哀しみの短編集。幻想的な異界への境界と、親と子を描いた叙情的な物語は、怪談ファンのみならず幅広い読者の支持を得る。待望の初単行本。 (内容紹介より)


まず、本を手にした時に、驚きました。
細い長目の糸3本が、本のしおりになっています。こんなの初めて見ました。
そして、短編の題名がそれぞれのページの端に薄いインクで印刷されていて、そのために、本の小口に微妙な柄が出来ていて、何か意味があるのかと、一生懸命眺めたりしました(^^)。

著者はこの本がデビュー作となる山白朝子さん。この方は、謎に包まれた存在なのだそうで、ある作家の変名だともいわれているそうです。私も、読みながら、作風が似ているある作家さんを思い浮かべましたが、同じ作風なら、変名を使う必要もないですからねぇ・・・(^^;。

七編の短編が収録されていますが、私が特に好きだったのは、「黄金工場」「鳥とファフロッキーズ現象について」「死者のための音楽」です。


・「黄金工場」
最初はかわいらしい話ですが、ラストは、凄惨です。人間の欲望と、身勝手さと、恨みの深さを感じさせる怖い話でした。

・「鳥とファフロッキーズ現象について」
こんなかわいくて賢い鳥がいればうれしいなと思わせておいて、こんな怖ろしいことをさせてしまう著者。「私」の心理の移り変わりがよく理解できました。そしてラストに一波乱・・・。ちょっと植木鉢の存在あたりが、弱いような気もしましたが、一つの作品で、いろいろな心理状態にさせられた見事な作品でした。

・「死者のための音楽」
この作品だけが書き下ろしだそうです。他の作品のように、血みどろであったり、血なまぐさいこともなく、美しい音楽に魅せられた女性が描かれています。これは、泣いてしまいました。安らかな死へ、そして、残された者への愛情を深く感じる、静かな物語です。 (2008,01,17)