シネマチェックトップページbook作家別index題名別index     








「秋の牢獄」
  恒川光太郎











十一月七日、水曜日。女子大生の藍(あい)は、秋のその一日を、何度も繰り返している。毎日同じ講義、毎日同じ会話をする友人。朝になれば全てがリセットされ、再び十一月七日が始まる。彼女は何のために十一月七日を繰り返しているのか。この繰り返しの日々に終わりは訪れるのだろうか――。
まるで童話のようなモチーフと、透明感あふれる文体。心地良さに導かれて読み進んでいくにつれて、思いもかけない物語の激流に巻き込まれる――。
数千ページを費やした書物にも引けを取らない、物語る力の凄まじさ。
圧倒的な多幸感と究極の絶望とを同時に描き出す、新鋭・恒川光太郎の珠玉の作品集。 (帯より)


デビュー作で直木賞候補にもなった「夜市」。2作目の「雷の季節の終わりに」。そして、これが3作目です。あら、2作目を読んでない・・・(^^;。

3つの短編が収録されています。
中でも、表題作の「秋の牢獄」がすばらしいです。

ある日突然、11月7日が繰り返されるようになった藍。永遠に繰り返される一日の中で、彼女が何を考え、そして、その中で、どういう事が起こってゆくのか。
こんなあり得ないことが起こってしまった状況で、彼女たちが取る行動が、いちいち納得できるところがすごいです。そして、怖ろしいです。

「神家没落」
発想が面白いですね〜。自由に移動する家。そこにいるのは、神か悪魔か。使いようによって、器は、意味を変えてしまいます。

「幻は夜に成長する」
本当に、恒川氏の物語は、発想がいいんですよね。
波が来て、大きく飛躍するか、崩壊するか。どちらに転んだ方が幸せなんでしょう。 (2008,03,06)