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「禁断のパンダ」
  拓未 司




柴山幸太は神戸でフレンチスタイルのビストロを営む新進気鋭の料理人。彼は、妻の友人と木下貴史との結婚披露宴に出席し、貴史の祖父である中島という老人と知り合いになる。その中島は人間離れした味覚を持つ有名な料理評論家であった。披露宴での会話を通じて、幸太は中島に料理人としてのセンスを認められ、その結果、中島が幸太のビストロを訪問することになる。一方、幸太が中島と知り合った翌日、神戸ポートタワーで一人の男性の刺殺体が発見された。捜査に乗り出した兵庫県警捜査第一課の青山は、木下貴史の父・義明が営む会社に被害者が勤務していたことをつかむ。さらには義明も失踪していることを知り・・・。 (表紙折り返しより)


第6回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作です。
著者の拓未司さんが、料理人と言うことで、この本は、まるでグルメ本のような趣でした。
最高の料理人が作る最高の料理と、それに合わせた最高のワイン!
これらの描写のすばらしいこと!!まるで、その場にいて、料理を前にしているような気にさせてくれました。思わず、夜、本を読みながら、ワインを飲みましたとも!ただし、もちろん、家にあった安ワインですが、それでも、本に出てくるようなワインを飲んでいるような錯覚に(少しだけ)陥りました(^^)。

この作品は、「このミス」大賞受賞作ですので、もちろんミステリーです。だから、殺人事件も起こります。それも、一人や二人ではありません(^^;。
そして、謎解きもされ、丁寧にも、オチもちゃんとあるのですが、それでも、料理の描写があまりにもすばらしかったので、殺人事件の方は、頭の片隅に追いやられ、料理のことばかりが印象に残ってしまう本でした。実際、殺人事件の方は、衝撃的なラストにつなげるためとはいえ、簡単に殺されすぎでは?!(^^;。

実は、本の中で起こる事件が、あまりにもセンセーショナルなものだったので、料理の描写に酔ってしまっていた私には、このストーリーの流れが、とっても不快でした。後半は、読みたくなかったなぁと、正直、思ってしまいました。
だから、せっかくのオチも、後味悪かったです(^^;。料理の描写が、これほどすばらしいものでなかったほうが、かえって、引き立ったかもしれないなぁと、我が儘にも思ってしまいました。

この著者の殺人事件の絡まない(もしくは、もっと軽い?殺人事件で)料理の出てくる小説を読んでみたいです〜(^^)。 (2008,03,11)