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「贖罪」上下
イアン・マキューアン  


現代の名匠による衝撃の結末は世界中の読者の感動を呼び、小説愛好家たちを唸らせた。究極のラブストーリーとして、現代文学の到達点としてーーー。始まりは1935年、イギリス地方旧家。タリス家の末娘ブライオニーは、最愛の兄のために劇の上演を準備していた。じれったいほど優美に、精緻に描かれる時間の果てに、13歳の少女が目撃した光景とは。傑作の名に恥じぬ、著者代表作の開幕。 (裏表紙より)



原作を読んでから映画化された「つぐない」を見たかったのですが、順序が逆になってしまいました。
でも、これは、映画から入った方が、理解しやすくて、正解だったかもしれません。少なくとも、私は、そうでした。話の流れが分かっているので、本を読みながらも、感情移入しやすく、噴水のシーン、図書館のシーン、玄関での別れのシーン、3人の再会シーン、そして、ラストの衝撃の告白。それらの場面がスムーズに理解でき、感情が高まりました。

それに加えて、映画では描かれなかった、登場人物たちの詳しい心理描写を読めたことで、より深く、彼らの気持が分かり、映画では、理解しきれなかった心の動きなども納得できました。

本当に、なんと切なく、悲しい物語なのでしょう。
憎んだり、悲しんだり、怒ったり、そういう、負の感情を持つことは辛いことですが、でも、それさえも、持てるだけ幸せなのかもしれないとも、思いました。

ラストの1999年のブライオニーの告白で、読者は、真実を知るわけですが、この選択は、彼女のぎりぎりの思いが詰まったものだと思います。
まさにこれが、あの二人に対する彼女の贖罪なのですねーーー(TT)。

忘れていたのですが、今年見た映画「Jの悲劇」もイアン・マキューアンの原作「愛の続き」の映画化でした。あの映画も、スリリングなストーリーで、映像も美しく、さらに、心の奥底に触れるようなすばらしい作品でした。
これはぜひ、イアン・マキューアンのブッカー賞を受賞した「アムステルダム」も読まなくちゃいけませんね。 (2008,06,16)