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「臨床真理」
柚月裕子


 臨床心理士の佐久間美帆は、勤務先の医療機関で藤木司という二十才の青年を担当することになる。司は、同じ福祉施設で暮らしていた少女の自殺を受け入れることが出来ず、美帆に心を開こうとしなかった。それでも根気強く向き合おうとする美帆に、司はある告白をする。少女の死は他殺だと言うのだ。その根拠は、彼が持っている特殊な能力によるらしい。美帆はその主張を信じることが出来なかったが、司の治療のためにも、調査をしてみようと決意する。
 美帆は、かつての同級生で現在は警察官である栗原久司の協力をえて、福祉施設で何が起こっていたのかを探り始める。しかし、調査が進むにつれ、おぞましい出来事が明らかになる。(表紙裏より)


第7回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作です。

出だしからとても読みやすい作品でした。
少女の自殺に、どんな真実が隠されていたのか?そして、彼女に強引に付き添った青年の思いとは??

新人臨床心理士のヒロインが、青年の心を解きほぐしてゆくところは、先日見た映画「パッセンジャーズ」と重なるところがあり、面白かったです。
こういう話を読むと、人の心とは、なんと脆く、そして頑ななんだろうと思いますねぇ。
だからこそ、こういう職業が必要になるわけなんですけれど。

そして、出てくるのが、”共感覚”。調べてみると、共感覚保有者という人は、本当に存在していると言うことで、スティービー・ワンダーも、共感覚の持ち主らしいです。
そういえば、色ではないけれど、井上夢人の「オルファクトグラム」の主人公も、変わった感覚所有者だったことを思い出しました。

物語は、青年の心を理解しようとして、事件の謎に挑むヒロインが描かれています。
彼女、なかなかアクティブな女性で、ハラハラさせてくれました。
共感覚や、失語症のためのパソコンソフトのことなど、興味深いこともありました。
ただ、事件の真相が、最初から見え見えで、その点、意外感がなかったのが残念でしたけど。 (2009,03,16)