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「風花病棟」
帚木 蓬生




乳ガンにかかり“病と生きる不安”を知った、泣き虫女医の覚悟―顔を失った妻を愛する男の、限りない献身―三十年間守り続けた診療所を引退せんとする、町医者の寂寞―現役医師にしか書き得ない悩める人間を照らす、たおやかな希望の光。あなたの魂を揺さぶる、人生の物語。帚木蓬生、十年間の集大成。感動と衝撃の傑作小説集。 (「BOOK」データベースより)



久しぶりに帚木蓬生さんの作品を読みました。
医師である帚木さんの作品は、考えさせられるものも多いですが、ちょっとグロテスクで、怖い話が多いようなイメージでした。でも、この作品は、医師ならではの、ほのぼのとした人の心を感じる話が多くて、心安らかに読めました。
10作品を収めた短編集です。
それぞれ印象的な話ですが、特に好きだったのは、次の作品です。


「藤籠」
医者としての苦悩が、よく分かる作品でした。
自分だったらどうだろうと、つい考えてしまいます。
患者の立場なら、やはり、自分の命の長さは、ある程度知りたいです。
でも、他の人の立場もあるし、難しいですね〜。

「雨に濡れて」
医者であっても、やはり人間。ガン患者になれば、一般の人以上に、予後や、治療法が分かって、辛いことも多いでしょうね。
でも、その事によって、患者の気持ちが初めて理解できる・・・と言うのも、ちょっとした皮肉でもありますね。

「百日紅」
親を理解できるのは、親の年代になってからだったり、親が亡くなってからだったり・・・。
切ないことですが、でも、その時に、親を誇りに思えるということは、幸せですね。

「顔」
泣けました。
女性として、というばかりでなく、人間として、なんとひどい病気があるものでしょうか。
それでも、病気に立ち向かい、そして、負けずに生きようとした女性。そして、それを支え続けた夫。
強い人間は、美しいです。

「かがやく」
病気に負け、親族にも見放された人生。
そんな中でも精一杯生きた人には輝きがありました。

「ショットグラス」
こんな医療が理想なのでしょうね。

「震える月」
偶然が重なって、父親の事を改めて知ることが出来た幸せ。
どんな人の人生にも、ドラマがあり、愛があるのでしょう。

「終診」
開業医には必ず訪れるこの時。
それまでの患者さんは、寂しいし、不安でしょうけれど、実は、医者本人が、一番悲しいのでしょうね。 (2009,07,04)