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「ガラスの煉獄」
檀上志保



受刑者が密かに発信した暗号文。あかねのアンテナが震えた。女子刑務所のガラス工房で、何かが謀られている…。あかねが立ち上げたその工房は、一人の天才受刑者トモの出現で上層部を色めきたたせた。ガラス製品の流通に見え隠れする北朝鮮の影。そして県警の絡む不可解な策動。思いもよらぬ「情報」が一瞬にして悲劇の引鉄をひいた。あかねは、トモとガラスを守り切れるのか…。元刑務官が描く女子刑務所、究極のリアル。戦慄のインテリジェンス長篇小説。 (「BOOK」データベースより)



著者は、元刑務官だったそうで、そういう職業に就いていない人には、絶対に書けないような、リアルな女子刑務所の実情が描かれています。
ただし、この本は、それだけではありません。
ほかにも、いろいろな伏線が張られていて、とても内容の濃いストーリーとなっています。
読み始めた時には、分からなかったのですが、これは、ミステリーのジャンルに含まれる小説だったのです(^^;。

主人公は、女子刑務所に務める刑務官、三上茜。
彼女は、受刑者に、ガラス製品の作成をさせ、それを監督する仕事に就いています。
それらの製品は、展示された後、予約販売されたり、オリジナル製品の注文を受けたりと、
製作する受刑者は、まるでガラス職人さながら。
もちろん、所内に、そういう人材がいてこその話なのでしょうねぇ。
その後、それらの製品がどうなってゆくのか・・・これには、ちょっとびっくりでした。

この部分だけでも、十分面白いのですが、
そこに、彼女の恋人や、中学生時代の親友の話が絡み合い、奥深い物語となってゆきます。

話の内容は、十分満足できました。

ただ、私は、とても、文章が読みにくくて、苦労しました。

話の中心が、女子刑務所という、専門的で、かつ、なじみのない世界なので、まず、取っつきにくい(^^;。
出てくる所内の登場人物も多くて、その役割とか、地位とかも、わかりにくい。
人物相関図が欲しかったかも・・・(^^;。

茜の友だちの話も、なんだか分かったような、分からないような・・・。
色々書きたいことは、分かるけれど、欲張りすぎのような気がしました。
もっとすっきりとしていた方が、面白さが増すような気がするのですが・・・。

でも、受刑者や、刑務官たちの人間関係だけでも、相当面白いので、こういうことに興味のある人には、おすすめです。 (2011,06,01)