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「夜行観覧車」
湊かなえ



父親が被害者で母親が加害者--。高級住宅地に住むエリート一家で起きたセンセーショナルな事件。遺されたこどもたちは、どのように生きていくのか。その家族と向かいに住む家族の視点から、事件の動機と真相が明らかになる。『告白』の著者が描く、衝撃の「家族」小説。 (内容紹介より)



あの衝撃作「告白」の湊かなえさんの作品です。

「告白」のインパクトが非常に強かったので、その後の作品には、ちょっとがっかりさせられ続きでしたが、本作は、久々に面白いなと思いました。

高級住宅地で、センセーショナルな事件が起こり、そのことによって、周りの家庭の問題も曝かれてゆきます。

まず出てくる遠藤家。
家庭内暴力・・・とまではいかなくても、この家の中学生の娘の親に対する態度ったらひどいものです。
”癇癪(かんしゃく)”と言う言葉で書かれていましたが、癇癪というイメージ以上のひどさでしたねぇ。

遠藤家に比べると、高級住宅地がよく似合う、上流家庭風の高橋家。
でも、事件が起こったことによって、その家の問題も色々出てきます。

そして、なんの問題もなさそうな小島家。
ここにもある問題が・・・。

実は、小島家には、もっとおどろおどろしいことが隠されているのかも・・・と、ちょっと期待?したのですが、それは考えすぎでしたねぇ(^^)。

外からは、幸せそうに見える家でも、中に入ると、案外いろいろな問題があるもので、
それがあるとき、堰を切って流れ出てしまう・・・。
高橋家のこの事件は、あまりにも唐突に感じましたが、これも、それなりの下地があってのことでした。

事件が起こって、周りの人が、「まさか、あの人が、あの家が・・・」という言葉をよく聞きますが、
きっと、こんな風に、それぞれその下地になるものが、隠されているのでしょうねぇ。

メインのストーリーは、事件の起こった高橋家でしたが、
一番インパクトがあったのは、やっぱり、遠藤家の娘、彩香ですね。
彼女のいらつきや不安定さの理由は、徐々に明らかにされ、彼女の苦しさも多少は分かるものの、
家にいるときのあの荒れ方は、かなりむかつきました。

他の登場人物も、結構心の中はモヤモヤしていて、その描き方が、ネガティブなところが、読んでいて面白かったです。 (2011,10,28)