シネマチェックトップページbook作家別index題名別index     


「薔薇密室」
皆川博子

第一次大戦下のドイツ・ポーランド国境近く。脱走兵コンラートは古い僧院に身を寄せる。そこでは所有者のホフマン博士が、人間と薔薇を融合させる常軌を逸した実験を行なっていた。コンラートはある思惑のもと、博士に協力を申し出る…。そして十数年後、ナチス・ドイツの弾圧から逃れたポーランド人の少女ミルカが見た、僧院の恐るべき真実とは?戦争と美への欲求という人間の深い業を流麗な筆致で描く歴史ミステリ。 (「BOOK」データベースより)

先日読んだ「開かせていただき光栄です」がとても面白くて、全作読破したいな〜と思っている皆川博子さんの作品です。

冒頭は、脱走兵コンラートが逃げ込んだ僧院で行われていた、ある実験の話から始まります。
その実験が、何ともまあ、幻想的、耽美的。
あり得ないことなのですが、読み進む内に、なんだか、そのことに納得してしまいそうになってきます。
ここら辺は、さすがに、皆川さんの筆力ですね〜。

しかし、途中で、話の舞台が、全く違う場所、人物に変わります。
コンラートの話に夢中になっていた私は、なんだかとっても残念でした。

でも、次の主人公、ポーランドの少女、ミルカの話も、魅力的で、すぐに、その話に夢中になってしまいました。
悲惨な状況にあったミルカが、いったいこれからどうなるのか。
そして、あの本の謎は???

こんな感じで、これ以降も話の一人称が、途中で何回も変化するばかりか、その話の真偽さえ、疑問になってきたりして、もう、頭が混乱しそうでした。
でも、面白いんですよね〜〜(^^)。

単行本は、557ページの分厚い本で、読み応えたっぷり。
皆川ワールドにたっぷり浸れて、幸せな読書時間でした(^^)。
次は、何を読もうかな。 (2012,08,30)