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「共喰い」
田中慎弥



第146回芥川賞受賞作「共喰い」――昭和63年。17歳の遠馬は、怪しげな仕事をしている父とその愛人・琴子さんの三人で川辺の町に暮らしていた。別れた母も近くに住んでおり、川で釣ったウナギを母にさばいてもらう距離にいる。日常的に父の乱暴な性交場面を目の当たりにして、嫌悪感を募らせながらも、自分にも父の血が流れていることを感じている。同じ学校の会田千種と覚えたばかりの性交にのめりこんでいくが、父と同じ暴力的なセックスを試そうとしてケンカをしてしまう。一方、台風が近づき、町が水にのまれる中、父との子を身ごもったまま逃げるように愛人は家を出てしまった。怒った父は、遠馬と仲直りをしようと森の中で遠馬を待つ千種のもとに忍び寄っていく....。川辺の町で起こる、逃げ場のない血と性の臭いがたちこめる濃密な物語。 第144回芥川賞候補作「第三紀層の魚」も同時収録。 (内容紹介より)

表題作「共喰い」は、第146回芥川賞受賞作です。

昭和63年。主人公は、17歳の遠馬。
彼のまわりに起こる様々な出来事が、描かれています。
最初の内は、穏やかに、淡々と。
雨の降らない夏を、じっと耐えるように、物事が静かに進行してゆき、
そして、やっと降った雨・・・豪雨と共に、壮絶な結末へと向かう、その勢いがすごかった。

もう一つ収録してある「第三紀層の魚」は、第144回芥川賞候補作だったそうですが、
受賞作と比べると、こちらの方が、ずっと穏やかです。

受賞作の方は、著者の激情があふれています。

田中慎弥さんというと、受賞会見の「もらって当然」発言が有名ですが、
再度この会見を見てみると、キャラが濃くて、なかなかの面白さです(^^)。
やっぱり、作家さんは、このぐらいのあくの強さも、創作上、必要なのかも?!

芥川賞というと、敬遠しがちですが、この作品は読んでよかったです。 (2012,10,05)