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「新月譚」
貫井徳郎



八年前に突然絶筆した作家・咲良怜花は、若い編集者の熱心な復活のアプローチに、自らの半生を語り始める。そこで明かされたのは、ある男性との凄絶な恋愛の顛末だった―。 (「BOOK」データベースより)

第147回直木賞候補作です。

売れっ子だった女流作家の秘密が、徐々に明らかになっていく物語です。

面白くて、すらすら読めました。

自分自身の容貌にも中身にも、自信のない女性の心理がうまく描かれていて、思わず、感情移入してしまいました。

その女性が、どうやって、売れっ子作家になってゆくのか。
木之内との仲は、これからどうなるのか。
興味津々で、ページを繰る手が止まりません。

主人公が作家であることで、今まで知らなかった作家の仕事の内幕とか、編集者との関係などが描かれているのも、面白かったです。

ただ、所々、疑問も残ります。
そんな有名人が、整形したことが、スキャンダルにならないなんて、考えられないし、
変貌した彼女に、親友がすぐに気がつくのも不思議。
なにより、人生経験の少ないただのOLが、読者を惹きつけるような作品を書くことが出来るのかという、基本的な疑問も・・・。。

でも、そんな事は良いんです。
それは、本人がお得意の、自己卑下による思い込みのせいなのかもしれないし。
それよりなにより、最初から最後まで、ぐいぐい惹きつける、筆致がすばらしかったですから。

ただ、直木賞の選考委員の、特に、女流作家には、ウケが良くないようでした。
確かに、こんな経歴の人が、こんなにすらすらと、傑作を書けるわけがないと、
同じ女流作家として、納得出来ないのも分かるような気がします(^^)。

作家という、いわば、自分の職業を、こうしてあからさまに、そして、女性目線で描いてしまう貫井さんは、やっぱりすごいなって、思いますねぇ。 (2012,11,18)