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「黒死館殺人事件」
小栗忠太郎





黒死館の当主降矢木算哲博士の自殺後、屋敷住人に血腥い連続殺人事件が襲う。奇々怪々な殺人事件の謎に、刑事弁護士・法水麟太郎がエンサイクロペディックな学識を駆使して挑む。江戸川乱歩も絶賛した本邦三大ミステリのひとつ、悪魔学と神秘科学の結晶した、めくるめく一大ペダントリー。(裏表紙より)



日本三大奇書といわれる作品のうちのひとつです。
私は、先日「ドグラ・マグラ」を読み終えているので、これが2作品目になります。

「ドグラ・マグラ」には、たいそう苦労させられて、二回目を読み終わったのは、読み始めてから1年近く経っていました(^_^;。
やれやれ、本作「黒死館殺人事件」も、同じように、苦労するのかと、少しばかり、どんよりと、そして、いよいよ”黒死館”だ!とワクワクとして読み始めました。
結果、「ドグラ〜」よりも、ずっと面白かったわけですが、それでも、違う意味で、本書も苦労させられたのでした(^_^;。

題名は、綾辻行人さんの「館シリーズ」のよう・・・というか、こちらの方が時代的には、ずっと先輩なのですが・・・な感じで、親しみが湧きます。
しかし、1ページ目から、やはり、これは、一筋縄ではいかないのだなと、思い知らされたのでした。
何しろ、1行・・・そう、たった1行読むだけなのに、知らない単語が、山ほど詰まっていて、その都度、目が、はたと止まってしまう始末。
便利な時代が到来して、本を読んで、知らない単語や、事象があれば、すぐに、PCや、スマホで、調べられるわけですが、この作品は、調べようとする意欲がなくなるほどの量の分からない言葉が、山ほど出てくるのでした。
その内容も、文学あり、オペラあり、歴史あり、悪魔学あり、宗教あり、などなど、ありとあらゆる事が出てくるのです。
いやあ、まいりました(^_^;。

ですが、ストーリーは、「ドグマ〜」よりも、ずっと面白く、登場人物たちが、なんとか把握できるようになると、そのストーリーに引っ張られるようにして、案外すらすらと読み進めることが出来ました。・・・というか、それは、難しいところは、知った振りをして読み進めた結果なのですが・・・。

ところで、この探偵・・・じつは、刑事弁護士なのですが・・・法水麟太郎の、事件解決能力は、いかなるものなのでしょうか。
確かに、異常に博学で、あらゆる分野のことを隅から隅まで知り尽くしているようなのですが、結局、私が知っている、”名探偵”といわれる人たちと同じく、事件の謎が全て解かれるのは、全ての事件が終わってからというわけなのですね、これが(笑)。

私たち読者は、彼の博学さを、事件によって知らされ、そして、ただただ感心するだけ。
しかも、彼の言うことは、全て、大仰で、こじつけ、もしくは、無理矢理の産物のような感じなのでした。
もちろん、法月麟太郎イコール小栗虫太郎なわけですが(笑)。

結局、この作品も、「ドグラ〜」のように、2回読み直したので、またまた、たいそうな時間がかかってしまいました。
でも、読後感は、よろしかったです。

そうそう、読み終わってから驚いたのは、最後に付いていた澁澤龍彦さんの解説。
なんと、犯人も、結末も明かされているのです!?
彼の言うことも、一理あるのかもしれませんが、初めて読む方は、やっぱり、解説は、最初に読まない方がいいと思うので、お気を付けてくださいね(^_^;。

さて、次は、日本三大奇書の最後「虚無への供物」です。
この作品は、前々から読みたかった本なので、とても楽しみ(笑)。 (2014,01,05)