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光の廃墟
皆川博子


紀元73年、ユダヤ人はローマ軍に抵抗し、敗れ、マサダで全員自決。その遺跡発掘の日本青年は外国人を殺し、自殺したーーー二千年の歴史を繋ぐ、イスラエル取材の、壮大な異色長編推理!(帯より)



いよいよ皆川博子さんのイメージを強く感じる作品の登場です。
私が読んだ単行本は初版本で、発行が昭和53年ですから、今から何年前だ?!・・・これだから元号だと不便なのよね(^_^;・・・っと、37年前の作品です。

舞台は、イスラエルのマサダ遺跡。
この地で、遺跡発掘作業をしていた日本人青年が殺人を犯し、その後自殺した所から物語は、始まります。

マサダという地名も初めて聞いたし、ユダヤ戦記についても、全くの白紙でしたが、そんな私が読んでも、その時代から始まり、その後のユダヤの辛い歴史に至るまでの経緯も無理なく分かりました。
こういう、未知の土地の出来事を、臨場感をもって読めるところが、皆川文学の好きなところです。

実際の殺人事件の合間に、自殺した青年の書いた物語が挿入され、マサダがどういう場所で、どういう経緯をたどって遺跡になったのかが、だんだんと分かってきます。
その後も、事件は、続いて起こり、ミステリアスで複雑な物語が展開しますが、ラストに全ての謎が解き明かされます。

この作品も、古さを感じさせず、とても面白かったです。
しかし、私にとって、もう、歴史の中にある出来事が、本の中の登場人物たちにとっては、ほんの少し前の生々しい出来事として書かれているところが、物語をリアルにを感じさせて、不思議な感覚でした。
親しい人を理不尽に失った人の悲しみと苦しさと憤りが胸を締め付けますが、ちょっと無理も感じてしまいました。

全ての謎が解き明かされ・・・とは書きましたが、クリスのミシャに対するある行動の意味だけは分かりませんでした。読み落としたかな・・・。 (2015,04,10)