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彼方の微笑
皆川博子


幼少の頃に凄まじい幻視体験を持った日高環は、成長してフレスコ画の制作に携わるが、仕事場であった聖堂学園の礼拝堂が爆破され、さらに身近な人物の死に直面する。すべてはひとりの少年によって引き起こされたものだったが、環はそれを契機として、自らが死そのものに強い魅力を感じていることに気づいたーーイタリアを彷徨する、死に魅入られた女性の物語。長編幻想ロマン。(帯より)



主人公環が、”凄まじい幻視体験”をするというので、皆川さんには珍しいファンタジー小説なのかと思ったら、幻視体験は、物語の本筋には、あまり関係がなかったような・・・(^_^;。
もちろん、私には分からない深い意味があったのかもしれませんが、私には、ピンと来ず、なんだか残念な思いがしました。

その後、成長した環は、フレスコ画家になり、知人の死を経験して自分の知らなかった自分を発見、イタリアに向かいます。

イタリアでは、私の知らない、色々な遺跡の話が出てきて、想像力をかき立てられ、ロマンを感じることが出来ました。

物語の中盤で、私が一番衝撃を受けたのは、環の知人の死。
本書に出てくる、唯一、まともっぽくて、好人物であった彼女の身の上に起きた悲劇は、あっさりと描かれているのですが、突然のことで、打ちのめされました。
このあたり、皆川さんは、容赦ないですねぇ(T_T)。

そのほかにも、特異な事件や、事象が出てきますが、そのあたりは、普通に生活していたら、絶対に体験出来ないようなことを疑似体験するようで、小説の醍醐味とも言えるのかもしれません。

環のまわりには、様々な人物が登場しますが、彼女と特別な何かを共有する3人が登場します。
それは、最初から、不穏な雰囲気を身にまとった冬人と、何気なく登場して、その後、重要な役回りをし始める北森なのですが、彼らとの繋がりで、いったい何を、何を描こうとしたのか、よく分からず、途中からだんだん、興味も薄れてしまいました。
皆川さんなのだから、きっともっと何かあるはず・・・と思っていたのですが(^_^;。

ただ、巻末の篠田真由美さんの解説を読んで、主人公の名前”環”繋がりで、本書が「冬の旅人」に通じると書かれているのを読んで、成る程なぁと、思った次第です。

ただ、私には、環=たまきという名前が読みにくく、ちょっと煩わしかった・・・というのは、全くの私的な感覚なのですが・・・(^_^;。 (2015,05,23)