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虹の悲劇
皆川博子


主婦、白坂蓉子は、叔母である利恵を殺す計画を立てた。その計画は綿密なものであった。フランスで起きた”パニック”事件にヒントを得、利恵が自殺する状況を作り上げたのだ。計画は完璧に実行された。他殺の痕跡は、何ひとつ残さなかった。万が一、他殺の疑いが生じた場合でも、蓉子の犯行とならない手は打ってあった。しかし、計画は狂った。自殺体は、予定より早く発見され、しかも死体は利恵ではなかった。事件は、蓉子の計画よりも根深いところで、すでに始まっていたのだった・・・。(折り返しより)



今までの皆川作品とは一転、日本を舞台としたエンタテイメントな推理小説です。

物語は、長崎から始まり、過去の北海道の北見へと繋がってゆきます。
全く趣の違う二つの事件が並行して描かれていて、この二つの事件がどのように関係しているのか、最初は全く分からないので、その意外な繋がりが判明していくところがスリリングで面白かったです。

蓉子の犯した、完璧に仕組んだはずの殺人が、思わぬ展開になっていったのには驚きました。彼女の驚愕と不安は、どれほどだったことでしょう!それを想像すると、こちらまでドキドキしてしまいました(^_^;。

その反面、冒頭から始まる長崎の事件の方は、地味な展開で、進展もゆっくり目。
その代わり、終盤になると、一気呵成に話が進み、二つの事件の接点が見えてきて、驚きの展開となっていきました。
まるで、松本清張ばりの推理劇です。

二つの事件を結ぶものは、日本の暗い過去の歴史。
いま、対外的に色々問題になっているように、確かに日本は、かつて隣国にひどいことをしてきた歴史があったことが、悲しいです。

それにしても、この話、人間関係が複雑で、過去と現在では、表記が違っていたり、外国の名前だったりするので、頭を整理しながら読まないと、わけが分からなくなりそうでした。
で、すっきり整理して、落ち着いて考えてみると、この犯人の慌ただしさ?は、尋常でないわけで、過去の因縁とはいいながらも、すごい行動力だと思い至ります。

題名に合わせて、七色の副題がついていますが、これは、無理矢理な気もする・・・(^_^)。 (2015,06,05)