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美しい星
三島由紀夫


地球とは別の天体から飛来した宇宙人であるという意識に目覚めた一家を中心に、核兵器を持った人類の滅亡を巡る現代的な不安を、SF的技法を駆使してアレゴリカルに描き、大きな反響を呼んだ作品。著者は、一家を自在に動かし、政治・文明・思想、そして人類までを著者の宇宙に引き込もうとする。著者の抱く人類の運命に関する洞察と痛烈な現代批判に充ちた異色の思想小説である。 (裏表紙より)



映画化される噂を耳にしたので、再読しました。
昔、文学少女だった頃(^_^)、一度読んだことがあるように記憶しているのですが、内容は、全く覚えていず、宇宙人の話?!とちょっとびっくり(゚◇゚)。

初めのうちは、自分たちが宇宙人なのだと思い込んでいる一家の話かと思ったら、実は、そうではないらしく・・・(^_^;。

途中からは、一家と相反する考えを持った”宇宙人”も登場し、後半は、彼らとの地球存亡をかけた討論バトルが始まります。

この本が発表されたのは、1962年(昭和37年)。
三島は、37歳の頃であったそうです。(彼は昭和元年生まれなので、年齢計算がしやすい!)
時代背景は、いわゆる東西冷戦時代。
まさしく人類の存亡の危機が迫る時代であったようで、そのことに、三島は、深い憂慮を感じていたのでしょう。
宇宙人たちは、人類存在の意味のなさを論じ、また一方では、その反論として、人間のいとおしさを挙げています。
この論戦は、私にとっては難解ですが、それなりに面白く、なるほどなと思いながら読み進めました。

金星人である美しい娘のロマンス話もあり、それに伴う父親の苦悩も描かれていたりして、宇宙人とはいえ、とっても人間的な彼らなのでした。 (2017,03,13)