斑状脱毛を特徴とする皮膚疾患




2.皮膚糸状菌症
定義 皮膚糸状菌症は、MicrosporumTrichophytonEpidermophyon spp.の真菌による(皮膚、毛あるいは爪の)感染である。
病因 猫の皮膚糸状菌症の最も一般的な原因はM.canis である。犬での最も一般的な原因はM.canisM.gypseum である。ほかには、T.mentagrophytesM.erinacei およびM.verrucosum が分離されるときがある。一見健康な飼猫は感染しているようにはみえないが、外見上正常な猫の皮膚と毛から皮膚糸状菌が分離されることがあり、特にこれは集団飼育の猫にみられる。
ある特定の動物の群れが感染しやすいように思われる。すなわち、12ヵ月齢以下の動物は免疫反応が不完全なために、皮膚糸状菌感染症が多い。皮膚糸状菌症は若齢の動物によくみられ、M.canis の皮膚糸状菌症はペルシャ猫に多発する。高齢、虚弱、免疫不全あるいは重度のストレスにさらされている動物は、同様に皮膚糸状菌症に罹患しやすく、より重度の臨床特徴を示す傾向がある。ジャック・ラッセル・テリアT.erinacei による皮膚糸状菌症に好発傾向がある。
皮膚糸状菌の感染がおこると、細胞介在性および体液性免疫が反応する。免疫反応、特に細胞介在性が感染を除去するために働く。皮膚糸状菌に惹起された炎症反応は、表皮を増殖させ、この表皮の流れによって皮膚糸状菌を「洗い流そう」とする。この状態が体に完全な抵抗性を与えるとは考えられないが、免疫された宿主でに感染により臨床症状がより早くおこり、そのため感染をより早く除去することができる。実験感染では、感染してから約5週間後に病変が最大の大きさに達するという結果が得られた。皮膚糸状菌症の自然治癒が報告されているが、人獣共通感染症の危険性があるため必ず治療を行う。
感染した動物から直接環境中に生存可能な胞子が落下することは同じ世帯や集落に住むほかの猫とヒトにとって、重要である。これらの胞子は18ヵ月生存している可能性がある。この感染源からの汚染をコントロールすることが、皮膚糸状菌症の管理に非常に重要である。
臨床的特徴 猫でのM.canis 感染の臨床症状は、症状のないキャリアから痂皮形成している皮膚炎までさまざまである。典型的な病変は、1つまたはそれ以上の、直径3cmの細かい鱗屑と切り株状の毛の、病状病変で、典型的には顔面、頭あるいは肢にみられる。掻痒と炎症がおこることがあるが、通常、巣状の病巣ではほとんどない。M.canis による皮膚糸状菌症のほかの症状は、局所性または全身の脱毛、丘疹痂皮性の皮膚炎、皮下の肉芽腫および爪甲真菌症である。
犬のM.canis による皮膚糸状菌症は、一般に猫より炎症が強い。病変では中心部が治癒性で周辺に拡大していく部分に痂皮、炎症および脱毛がみられるが複数の病変が生じることもある。表面の鱗屑はよくみられる所見であり、脱毛部位に痂皮の付着した丘疹がみられることもある。
T.mentagrophytes(そしてM.gypseum)による皮膚糸状菌症は、より炎症が強い。顔面の病変は、紅斑、痂皮、脱毛症およびフルンケルからなる完全な左右対称性のことがある。広範囲な部位に発症することがあり、肢の皮膚全部にみられることもすくなくない。罹患部位は境界明瞭であり、しばしば炎症と痂皮部分として認められる。痒みの程度はさまざまである。
M.persicolor による皮膚糸状菌症はまれである。菌糸が角質層に限定して存在し、毛に侵入しないという点で独特である。M.persicolor 皮膚糸状菌症の病変は、しばしば頭部にみられ、脱毛と炎症のほとんどない鱗屑付着が特徴である。
類症鑑別 巣状の病変:
・猫咬傷性腫瘍
・ツメダニ症
・毛包虫症
局所性/全身性の病変:
・ノミアレルギー性皮膚炎
・休止期/成長期脱毛症
・心因性脱毛
巣状の病変:
・表在性膿皮症
・毛包虫症
・角化異常症
・注射後の脱毛症
顔面の/局所性の病変:
・毛包虫症
・表在性膿皮症
・免疫介在性疾患
・深在性真菌性病変
要点 ・誤診の可能性が大きい。
・人獣共通感染症の危険に注意する。
・飼主との十分なコミュニケーションは絶対必要である。



斑状脱毛を特徴とする皮膚疾患 目次へ戻る 皮膚糸状菌症 治療へ

カラーハンドブック 犬と猫の皮膚病
発行発売元:株式会社Medical Science/株式会社Interzoo

ISBN 4-89995-153-1 C3047