04年 全国学校飼育動物研究会 設立記念シンポジウム報告

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    **全国学校飼育動物研究会・ 設立記念シンポジウム次第
      シンポジウムチラシ      シンポジウム報告

日時:平成16年8月28日(日)
主催:学校飼育動物研究会
共催:お茶の水女子大子ども発達教育研究センター
対象:どなたでも関心のある方
会場:お茶の水女子大学共通講義棟2号館2階201号室
       東京都文京区大塚2−1−1 
       地下鉄 丸の内線 茗荷谷下車5分 地図

テーマ:「子どもの心を豊かにする学校飼育動 物」
     
ー命の実感をあたえ、情愛ゆたかに育てたいー  
内容      
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獣医師交流会

参考書展示:参考書&各地獣医師会作成のマニュアル
書籍販売 教育開発研究所、少年写真新聞社 群馬県獣医師会 など
 
パネル展示:「飼育事例& ふれあい教室教材」内容
 新宿区西戸山幼稚園・新潟市立紫竹山小学校・鎌倉市立大船小学校
    群馬県獣医師会学校動物愛護指導委員会・三泗病院協議会
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テーマ「命の実感をあたえ、情愛ゆたかに育てたい」 
総合司会:鳩貝太郎 国立教育政策研究所教育課程研究センター総括研究官

挨拶 全国学校飼育動物研究会会長
    酒井 朗 お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター長
    五十嵐幸男 社)日本獣医師会長

講演    
 「脳の発達と動物飼育」
      唐木英明先生 日本学術会議会員・東京大学名誉教授
 「獣医師が支援する動物介在教育」
      桑原保光先生 群馬県獣医師会・群馬県教育委員
 「委員会活動から4年生の学年飼育へ」 
      山崎京子先生 西東京市立保谷第二小学校教諭
 「教室内飼育の課題と成果」
      森田和良先生 筑波大学附属小学校教諭 

総合討論  パネラー:上の4人と中川美穂子 

講評:日置光久文部科学省教科調査官
挨拶:嶋野道弘先生 文部科学省主任視学官

 
              「パ ネル展示紹介」  


新宿区立西戸山幼稚園                  園長 佐 藤暁子

 子どもたちが、毎朝元気にやってきて、一番にすること。 まず、ウサギやモルモット、
ハムスターに「おはよう」と声を掛け、なでたり、だいたりしながら少しのあいだ柔らかな
気持ちですごしています。心にゆとりを持ちたいとき、友達とけんかをして悲しいとき、
そんな時黙ってそっとそばにいて受け止めてくれる子どもたちのかけがいのない仲間
なのです。   
小さな生き物との触れ合いを通して子どもたちの心の中に本当のやさしさが育っていく
ことを期待しています。         
      
新潟県紫竹山小学校     新潟大学人間科学部附属新潟小学校教諭 長沼智之             
 6年前から生活科に「モルモットの飼育」を取り入れ、システム化しています。子供達は1
年生の2学期からモルモットを学級に1匹づつ飼育し、1年後の2学期に新1年生に引き継
ぎます。子ども達は動物に興味をもち、世話することで愛情が醸成され、そのことで様々な
刺激を受けます。新1年生に引き継ぐ時、2年生は心配して懸命に説明し指導します。なお
飼育ケージを教室の外に置くことで、6年生までふれあえ、想いを共有できています。

鎌倉市立大船小学校                    校長 竜田孝則
 休日や長期休業中は、児童の安全、担当職員の加重負担など様々な課題があったが、こ
れといった解決策もなく、汚れがちな住居や不足しがちな食料など、動物たちも大いに迷惑を
被っていた。そこでPTAを通じて「飼育応援団」という名称でボランティアをつのったところ、40
所帯を越える応募があり、年末・年始を含めて当番が決められ、飼育にとりくんできた。「飼育
応援団」は今年で4年目を迎えた。

三泗動物病院協議会(泗動協)               学校飼育動物担当
  泗動協は、三重県四日市市と周辺町村で開業する獣医師有志9人の集まりです。1999年
頃から、子供たちのためにとの気持ちから学校飼育動物と関 わり始め、少しずつ手探りでこ
こまできました。昨年度になって、ようやく 教育委員会との協力関係もできはじめたところです。
今年度からは、獣医師会の支部活動の一つとして広がり始めています。私たちが、学校訪問
活動の時に使うスライドを紹介します。子供たちにウサギのことを理解してもらう
 ためのもので、興味をもって聞いてもらえるように工夫しています。

群馬県獣医師会                      学校動物愛護指導委員 会
群馬県動物ふれあい教室事業について  動物とふれあうことにより子ども達が「やさしさ」と
「命の大切さ」を感じられるように、群馬県では平成10年度から獣医師を「校医」として小学
校に派遣する事業を始めました。生活科の授業を重点に子どもが動物と楽しく遊び、怖がら
ずに動物を抱ける指導「動物ふれあい教室」をT・T方式で実施しています愛情飼育を基本に
動物介在教育として取り組んでいる指導実施例と教材などを紹介致します


               「参考書の展示と販売」

学校の動物飼育に関する参考書と各地の獣医師会発行の参考書を展示しています。またそ
のうち「学校飼育動物と生命尊重の指導」「みんなで育てよう学校飼育動物」をそれぞれ教育
開発研究所、少年写真新聞社が展示即売をしています。
 なお群馬県獣医師会では、幼稚園や小学校での動物飼育が楽しいものであり、教育の一環
で実施している飼育(動物介在教育)には基準が必要であると考えています。そこで、獣医師を
含めた指導者の認識や見解に統一した基準を定め、現場での指導マニュアルを作成しました。
動物ともっと仲良くするための参考書として、子ども対象「ふれあい」、教員用指導書「ふれあい
指導案」、動物介在教育実施参考書「ふれあい実施マニュアル」を販売しています。


                             「講師 プロ フィール」

唐木 英明 東京都
 獣医師・農学博士・国際認定トキシコロジスト。1964年東京大学農学部獣医学科卒業、東京大
学助手、助教授、テキサス大学ダラス医学研究所研究員を経て1987年東京大学教授、東京大学
アイソトープ総合センター長を併任。2003年東京大学名誉教授、日本学術会議第会員、内閣府食
品安全委員会専門委員 社)日本獣医師会学校飼育動物委員会委員長 著書「暮らしの中の死
に至る毒物・毒虫 講談社」「安全の費用 安全医学」他

桑原 保光 群馬県
 獣医師・1979年日本獣医畜産大学獣医学科卒業 桑原動物病院(前橋市)院長・2002年 日本学術
会議科学教育研連・獣医学教育研連合同会議学校飼育動物研究委員 現在 社)群馬県獣医師会
理事 前橋地区獣医師会会長 群馬県獣医師会学校動物愛護指導委員会委員長  群馬大学教育
学部生活科非常勤講師  日本獣医師会学校飼育動物委員会委員  群馬県教育委員会委員 著書
「群馬大学教育学部新生活科研究(楽しい飼育と動物介在教育)」群馬評論社「学校飼育動物と生
命尊重の指導」(共著)教育開発研究所 他

山崎 京子 東京都
 西東京市立保谷第二小学校教諭・1981年東京学芸大学教育学部卒業 都内三鷹市、新宿区、
東久留米市の小学校を経て2000年に現任校に勤務、現在に至る
H15・16度 都人権尊重教育推進校 研究主任

森田 和良 埼玉県
 筑波大学附属小学校教諭・1978年埼玉大学教育学部卒業、埼玉県草加市立草加小学校などを
経て現在に至る 日本初等理科教育研究会編集部部長、NHK学校教育番組5年理科「サイエンス・
ゴーゴー」番組編成協力者 ソニー教育振興財団中央特別研修会助言者 國學院栃木短期大学非常
勤講師 日本学術会議学校飼育動物学習会委員 著書 「教科書を豊かに発展させる授業理科」学事
出版 「『わかったつもり』に自ら気づく科学的な説明活動」(学事出版)編著 「小学校授業クリニック
理科5年」(学事出版)

中川 美穂子 東京都
 獣医師・1968年日本獣医畜産大学卒業 文部省委嘱「望ましい動物飼育のあり方」作成委員会委
員 日本学術会議学校飼育動物研究委員会委員 現在 お茶の水女子大学子供発達教育研究セン
ター客員研究員 日本小動物獣医師会学校飼育動物対策委員会副委員長 社)日本獣医師学校飼
育動物委員会副委員長 全国学校飼育動物獣医師連絡協議会主宰 中川動物病院長 著書「みん
なで育てよう学校飼育動物」(少年写真新聞社)「学校飼育動物と生命尊重の指導」(編集執筆)教育
開発研究所他

嶋野 道弘  埼玉県 
 文部科学省主任視学官・公立小学校教員 埼玉大学附属小学校教員 埼玉
県教育局主任指導主事 文部省教科調査官を経て文部科学省視学官を経て現在に至る 著書など
 「生活実践からつくる生活科の新展開」東洋館出版 「生活科・総合的な学習」監修東洋館出版 
「改定小学校学習指導要領の展開 生活科編」明治図書 「みんなで遊ぼう校内あそび(1 2 3)」
ポプラ社 「学校飼育動物と生命尊重の指導」(分担執筆)教育開発研究所 他
   
鳩貝 太郎 千葉市
 国立教育政策研究所教育課程研究センター基礎研究部総括研究官・文部省高等学校学習指導要
領調査研究協力者(理科・生物)文部科学省「体験活動事例集」作成協力者 栃木県総合教育センター
環境学習指導資料作成委員会指導助言者 日本生物教育学会常任理事 日本科学教育学会理事 日
本学術会議科学教育研連・獣医学研連共催シンポジウム「学校における飼育動物」を企画運営 著
書「環境をテーマにした学習活動50のポイント」(編著)教育開発研究所「生きるための知識と技能O
ECD生徒の学習到達度調査」(分担執筆)ぎょうせい 他


 報告

シ ンポジウム参加者 約250名、内訳は教育関係 123名、獣医関係85名、他保護者や小学生
、愛護関係、報道陣などで、沖縄から青森まで 台風の中、集まってくださったことは感激でした。


 唐木先生は、脳の発達の話から、親の愛情と教育によって「本能的欲求の暴走を抑制できる」
「その教育の中に動物との関わりも必要だろう」と話されまし た。


 桑原先生は、飼育の現状への疑問と対応法を「子どもを育てるなら群馬県」との県のモットーを元
に行われている群馬県の動物介在教育の現状を報告されまし た。その中で、「飼育には基準が
必要」と話されました。


山崎先生は、担任として飼育担当になって当初とても困ったけど、子どもと動物の関係を知り、飼育
を一単元だと考えていたが 「学級運営、人格教育、人権教 育、科学教育など」全般に効果がある
ことに驚き、結局校内研究の人権教育に動物飼育を位置づけたとお話になりました。


森田先生は、教室内飼育の6年間の活動の実際をお話になり、集団で飼育するからこそ学べたこ
とを具体的に示され、教室内飼育が十分に教育に活用できるし効 果的であるから続けていくと話さ
れました。


 なお、山崎先生も森田先生も、獣医師と保護者の支援があってこそ、丁寧に実践できることと報
告しました。


会の後、教育関係者からは驚きをもって、飼育を見直したと、
また、獣医師からは こんなに重要な事に関わっているのだという感想を頂いてます。

また、当日の資料として用意した配付資料の他に日本小動物獣医師会がH16年度の委員会報告
書を
250部提供してくださいました。 
 
 なお、講評は嶋野主任視学官が、台風の影響で急遽 日置教科調査官にお任せになりましたが、
台風がひどすぎて予定が変わり時間ができたと、嶋野先生がわ ざわざ総合討論に立ち寄ってくださ
いました。


講評:日置教科調査官
講演や総合討論を聞いて「心情をともなう丁寧な動物飼育」は、
1,実物系の学習として活用(実感を形作る)
2,メンタルローテーションの立場から(心情を形作る)。他の子どもの視点に立って考える訓練
3,子どもと動物の関係性(動物を介在した三項関係)関係の改善、コミニュケーション訓練 
4,認知的能力を養う(大事な動物をよく観察して、切実な思いで問題解決していく)
   などの教育への可能性がある。
   また、飼育の維持には獣医師の支援は必要だ。とお話になりました。

 
嶋野先生も最後の締めにご挨拶して下さり、「自分は日置先生に講評をお願いしたのでここにい
る必要はなかったが、 来てしまったのは、この研究会に将来の希望を見いだしている」からであり
「十分に期待に沿う内容であった」と話されました。


今回のシンポジウムは盛会でしたが、研究会としての活動はこれからです。教育関係者が大勢関
わっておられるので、「獣医師や保護者のサポートを得て行われ る、学校での「心情をともなう丁
寧な飼育」」が、広がっていくような気がしております。


 いただいたメールから 少しだけをお届けします   
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 大成功ですね。私もほっとしました。 継続こそ期待に応えることでしょうね。無藤 隆
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この活動にこんなに熱心な方々がこんなにもいらしてほっとするやら 刺激になるやらの一日でした。
また文科省の先生もお話が頂けて心強い思いでした。この会が益々進化することを願ってやみませ
ん。                                       東京都獣医師会の委員

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台風の影響で飛行機が遅れ1時に開場入り致しました。日帰りだったため、話あいに参加できずに
無事沖縄に戻って参りました。皆様の熱い気持ち早速学校飼育 動物委員会にて報告致します。

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たくさんの参加者があって大成功でした。これからが本番という気持ちでがんばっていきたいと思いま
す。実践を積み上げていくように、校内の先生方にも働き かけていきます。

まずは、お礼を言いたくてメールをさせて頂きました。                 国立附属小副校長
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会長になられた宮下先生はじめ嶋野先生とかご一緒に仕事をして存じ上げている方々ばかりでした。
 それにしても唐木先生のお話はすごかった。顔が非対称のものを動物は不快に受け取るようになっ
ているから,それを理性で押さえる必要があるということ は,教育に関わる者はそうだと知っていて
も言えないです。でも,本当なんでしょう。                     国立附属小 教頭

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 (中川)唐木先生は、脳の発達という観点から、
 親の愛情と教育が もって生まれた本能的な欲求を追求する「脳の暴走」を抑制させる、と言う話を 
なさったのだと思います。また最近のひどい事件を起こ す子供達の大脳の発達に異常が見られのは分
かっているともお話になりました。


各先生の話、また討論内容について勉強になったと、特に教育関係者の皆様から感想をいただいてお
りますが、後ほど、会員の方にはこれら講演内容、討論内容 を収録した会誌(テープ起こし中)

を お届け致します  (9月6日 現在:会員数223名)

学校飼育動物研究会事務局  中川美穂子           上 に 全国学校飼育動物研究会HP