教育施設での犬の飼育について、 (中川美穂子) 04年9 月10日 
                     (学校飼育動物と生命尊重の指導)より 一部に書き足し

各小学校では、動物の特性を検討しながら、その地域の環境、動物の寿命や飼いやすさ等に注意して選んでください。あまり世話の大変な種類の動物を飼育する のは避けましょう。

  イヌ
    イヌはあまり学校で飼育されていませんが、時々、学校に迷い込み飼育されるものがいます。

平成5年の獣医師への調査でも、162校中8校で飼育されていると報告されていました。また、172人中29人の獣医師が学校飼育動物にイヌを推薦してい ました。(表2)。規模の小さい学校では児童と仲良くしている実例も見られています。
 しかしイヌは他の小動物とは異なりコンパニオンアニマルと言われる よ うに、人と特別な絆を作り人の伴侶となれる動物で、それだけ人の愛情を必要としています。不特定多数の人が無責任に飼育しないよう、イヌか ら見て飼い主が常にわかるように、そして犬が人を信じられるように飼うべきです。もしこれらの条件が満たされたイヌが校庭で児童と遊ぶなら、他の動物とは 比べようも無いほど児童と友達になれるでしょう。

  しかしイヌを放置するような事になれば、イヌはノイローゼになり、子どもにとっても危険な状態になります。可愛がっていた先生と一緒に園児たちと仲良くしていた幼 稚園の犬が、その先生が辞めてしまった後に、だれからも愛情を掛けてもらえず一人ぼっちになり、とうとう園児に噛むようになった例を以前見たことがありま す。可哀相なことに、そのイヌは、誰も来ない園の裏に鎖でつながれ、人を信じられなくなり、おどおどしていました。(この犬は、丁度お産をしたのですが、 押し寄せる子どもに子犬を見せてあげる先生がいませんでした。可愛がってくれていた教師が辞職したのです。それで、母犬が歯をむくようになり、そうなると 子ども達が石や棒で対戦する事になり、最後は噛むようになったのです、可愛そうでしょう、これは、私の「動物と子ども」*に書いてあります)(*フレーベ ル館発行 現在中川の手持ちのみ)

 休日の対応も問題です。夜や休日には動物を学校に置いていくような 条件では、イヌを学校で飼うことは避けたほうが良いでしょう。
 なお校長先生か特定の先生が自分の飼い犬を毎日連れて登校し、子どもと遊ばせてあげることが出 来たら、犬も安定し子ども達も犬を楽しむ事が出来るでしょう。ある高校で気持の荒れていた生徒が、先生が毎日連れてくる犬にブラシをかけながらポツポツと 自分の家庭の事情や悩みなどの胸のうちを語るようになった例もあります。特に小学校高学年以上の子どもには犬と触合うことは非常に意味のあることですが、 無責任に飼わないように充分に注意が必要で、現在の日本の小学校の現実ではやはり家庭で飼う方が無難でしょう。
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獣医師や動物愛護家は「エキゾチックより、犬猫の方が教育的に役に立つ」と言います が、
 私は「犬は特定の人と繋がる動物で、飼い主がはっきりせず、夜も無人のところにおいておかれる学校には耐えられない。精神的に不安定になった危険な場面 もある。
またしつけも必要。ある特定の先生の飼い犬を、毎日学校につれてくるのが、良いで しょう。
 また、小さな子どもには「動物からの働きかけが少なく、気持ちを考えてあげなけれ ばならないエキゾチックのほうが適している」と答えています。

事例として

1,和歌山の校長先生:飼い主が特定されないため、躾のむずかしさと、その結果の危険性はそのとおりだ。実は、今いる犬は子どもの前では餌をやらないよう にしている。子どもに歯を剥く。この犬は少数の人以外には、あまり言うこと聞かない。放すときは、原則として子供のいないときにしている。ただ、教員室の 人間関係に有効であったので、この犬を飼うことにした。(複数の学校から同じく危険になったとの意見が出ている)(このHP講演会の記録H15年12月 25日から)

2,    東京の小学校で飼われていた犬。子ども達が絵をかいて素敵な飼育舎をつくっていたが、密着する飼い主が特定されないため、人になつけなかった。つまり人と 目をあわ さず、好きなように徘徊し、小屋の中でぐるぐる旋回していた。これは精神病の症状をあらわしている。狭い展示室に押し込められてる孤独な熊の症状と同じで ある。
 子どもとの心ある交流は殆どできていなかったが、子ども達は犬とはこんなものと理解していたかもしれない。
 結局、この犬を導入した教員に引き取ってもらった。

3,    私立の小学校で、あるカウンセリング担当の先生が 人と動物の関係学を学び、その先生固有の犬を毎日学校につれてきて、子ども達のカウンセ ラー 助手としている学校もある。これは学校の犬ではないので、常に飼い主といるため、犬の精神状態も躾も良く、健康管理されて、子ども達と良い交流を持ってい る。
  が、学校の動物に比べれば、子ども達にとって自分の動物という感覚が、少ないだろう。
       
最近、このような飼育を勧めるめる考えもあるが、
 これはいわゆる学校飼育動物とは異なる考え方である。
学校にとっては、休日の世話もないなど、苦労もすくないだろうが、自分が面倒みなければ死んでしまう
との、切ないまでの子ども達の本気をどこまで引き出せるかが、鍵であろう。

なお、動物愛護団体は飼い主のない犬や猫を学校で引き取る事を提案しているが、毎年処分される動物は学校総数より多数である。また寿命は15〜20年もあ るため、 一度学校に犬や猫をいれたら、その後、相当長いあいだ学校で別の犬を引き取ることはできない。処分される犬を減らすことにはつながらない。

 学校は動物を引き取る場ではないので、教育にどの動物をどのように活用すべきかを 考える べきであろう。
 まずは、今 9割の学校にいる学校飼育動物を大事にして、良い交流を得られるようにするべきと言える。

@ネコ
ネコも愛情を必要としており、特定の人になつく動物である。その特定の人がいないとき、多くが成熟するとき、家出をして行くのが普通である。結局 無責任 な飼育になります。
なお、可愛がってくれる先生がいるときでも、休みの日には来てくれないため、寂しい思いをしている。
また、その先生が転勤したときは、迷い出て行く事が多いだろう。
 犬も同じだが、可愛がられて捨てられる気持ちを考えてもらいたい。
ただ、ネコは犬と比べて、寂しさがあっても、いらいらして人にかみ危険はずっと少ない。

学校と犬を両方しっている生活衛生課の触れ合いの担当者にきいても、学校で犬や猫を無理と言います。

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