鳥インフルエンザについてであれば、養鶏農家以外の方であれば、まず直接的な被害はこうむることはないでしょう。
いたずらにおびえる必要はありません。
鳥インフルエンザを心配されている方に申し上げておきたいのですが、研究者が懸念をもっているのは、鳥インフルエンザの爆発的な感染力が人間のインフルエンザウイルスに持ち込まれることなのです。
そして、人間のインフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルスは遺伝子的にかなり離れた位置関係にあり、自然界においては、人間に感染しにくいウイルスであって、極めて交雑が発生しがたいのです。
人間に感染しやすいという遺伝子的位置関係からでいけば、鳥ではなく、豚のインフルエンザの方が、まだ近いでしょう。
WHO等が心配しているのは鶏や豚が人間の生活環境と異常に接近していて、それぞれのウイルスについて同時に感染してしまうことと言えます。
同時感染があれば、それだけ遺伝子情報のやりとりが発生しやすくなるからです。
そして、その中から新種のインフルエンザウイルスが生まれてくるかもしれないからなのです。
換言すれば、鳥インフルエンザを恐れているのでなく、感染力の強い新種のウイルスが生まれてくることを危惧しているのです。
たとえ、可能性として低くても 今、ウイルスを根絶することができれば、そのような心配をする必要さえもなくなるからなのです。
我が国においては、豚インフルエンザの人間への罹患も話題とはなっておりません。
鶏も豚も畜産農家を除けば、人間の生活環境内から隔離された場所で飼育されているからです。
しかし、その一方で、人インフルエンザウイルスによる死亡者の数は3桁になります。
鳥インフルエンザウイルスと比較してみて、人インフルエンザの方が、より直接的な問題であるとは考えられないでしょうか。
肉を食べた卵を食べたで鶏がもっている疾病に罹患してしまうのであれば、食肉検査や食鳥検査を実施している獣医師達の仕事のことをあまりに無視してしまっていることになります。
食品を介しての罹患は、まだ報告はないはずです。
動物からの感染というのは、けっしてないわけではありませんので、注意を呼びかけるのは、けっこうなことなのですが、「不安を煽る形」になってしまうのは好ましくありません。
本来、このような時に冷静に解説をしてくれなくてはならない研究者や行政の担当者が、予算獲得の好機というような動きをかいま見せることがあります。
その辺りに不誠実さを感じてしまいます。
新種のインフルエンザウイルスが生まれる危険性というのは、私は大学生の頃から聞かされていましたし、それ以前からも指摘のあったことなのです。
ご存知の方も多いと思いますが「動物のお医者さん」の中でもヒヨちゃんという雄鶏がインフルエンザに罹患したエピソードもあります。
渡り鳥から、鳥インフルエンザウイルスの分離は20年以上前から報告がありました。
(いずれも、弱毒型ということになりますが)
鳥インフルエンザの爆発的な流行性の強さというのも、この疾病が世に認められた当初から知られていたことです。
どちらも半世紀前に予想できていたことなのに、ここへきて、急にソワソワしだしてきています。
インフルエンザウイルスのそもそもの故郷は、シベリア方面ではないかと考えられています。
しかし、世界に脅威をもたらすであろうと危惧される新種ウイルスは、おそらく東南アジア発であろうというのが、大方の見方です。
これは、いかに人間の生活そのものが新種ウイルスの出現に深く関わっているかを物語っています。
シベリアで毎年新たなインフルエンザウイルスが生まれ、自然界に放たれていても、その多くは、ウイルスハンターに捕獲されるところまでもいかずに消えていきます。
その反面、人間が関わって生まれてしまう「鬼子」の出現を、世界中が恐れています。
南北問題の1つとしてとらえる方もおります。
(政治の話としては、こちらは不向きですので、省略します。)
鳥インフルエンザウイルスを防圧できれば、新種のウイルスの発生の抑止策となりえるということで、事が鶏相手のうちになんとかしたいということなのです。
今現在のところの鳥インフルエンザに人間が感染した場合の致命率はおよそ50%くらいのようです。
この死亡原因というのもサイトカインショックによるのではないか、直接的死因ではないのではないかという見方が出てきているそうです。
一般の方が、このウイルスに遭遇する可能性は、かなり低いと考えられますし、卵や食肉から罹患するということは、まず考えなくても良いのではないでしょうか。
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