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獣医師広報板のキャラクター:ココロちゃんTNR(Trap:猫を捕獲する、Neuter:不妊去勢手術を行う、Return:捕獲した場所に帰す)で野外の猫が減りますか?
回答:megumi takeda
初出:2018/12/28
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<回答:megumi takeda>
「TNRで猫が減るか」ですが、端的に回答することは難しいです。
もともといる猫の数や地勢条件、活動家のモラール、資金がどれだけ続き活動を続けられるかなどの諸要因により結果が変わります。
TNRで猫が減るかどうかは、海外特にアメリカでは多くの学術研究がされており、論文が発表されています。
猫が減る効果を認める論文もありますし、否定する論文もあります。
ただし近年では「TNRで猫は減らない」が優勢であり、通説・定説になりつつあると思います。
その理由は次の通りです。
1、TNRの猫減少効果を否定する論文が多く出されており、実際に効果がなかった、むしろ猫の数が増えたという事例が多く報告されている。
2、それをアメリカなどの連邦政府機関や州政府が支持している。
3、猫の食害を受けている希少な野生動物の保護区では、日本以外ではTNRは行われず猫は駆除一択「である(本当に猫の減少効果があるのならば、このような地域でTNRが採用されているはずである)。

1、「TNRが猫を減らす効果がない」とする学術論文ですが、アメリカ合衆国の獣医師による、公益財団法人、Hillsborough Animal Health Foundation (HAHF) のHPにまとめられたものがあります。
https://hahf.org/awake/tnr-not-working/
TNRで猫が減らない原因は、まず流入猫の問題があります。
TNRでもともといた猫を自然減で減らしても、新たによその地域から新しく猫が流入して減らないとしています。
そのほかには、対象とするエリア内の猫を完全にTNRできない(いわゆる取りこぼし)がでて、その猫による繁殖がTNRによる繁殖抑制効果を上回ることや、資金の枯渇やモラールの低下で活動を継続できないことが挙げられます。

2、日本の環境省に相当する(つまり野良猫の管理を所管する官庁)である、アメリカ連邦政府野生動物生物庁(U.S Fish and Wildlife Service)は2009年に、「TNRの成功事例はひとつもなく」とHPで結論付けています。
よってアメリカ合衆国連邦政府は、TNRは猫の数を減らす効果はないとしており、政府としては反対する立場です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E7%8C%AB
このHPの記述は削除されましたが、原文はこのようにあります。
It was thought that this would help curb the population so that there would be fewer feral cats.
However, after many years of these programs and subsequent studies to determine their success, most cat populations stayed the same, increased or decreased only slightly.
There was no “success” story.
TNRは野良猫を減少させ、個体数増加抑制効果があるだろうと考えられていました。
TNRプログラムの実行と多くの研究が、TNR信奉者が成功したと判定するするために、長期間続けられました。
しかしほとんどのTNRを実行した猫の一群は、個体数が同じままが僅かに増減しただけでした。
TNRの成功例は、ただの一つもありませんでした。

アメリカでは、州政府もTNRの猫の減少効果を否定しています。
対してTNRを「猫を減らす効果がある」として推奨し、公的制度としている州は、アメリカ合衆国には一州もありません。
テキサス州は、多くのTNRの猫の減少効果を否定する学術論文を根拠に「TNRは猫を減らす効果はない」とし、州政府は支持しないとしています。
https://abcbirds.org/wp-content/uploads/2015/10/Texas-Parks-and-Wildlife-Department-Feral-Cat-Briefing-Paper.pdf
Sterilization programs are ineffective in managing feral and free-roaming cat populations, and do not address the ecological impacts that these cat populations can have on our natural resources.
For these reasons, which are explained in detail below, TPWD does not support the creation or perpetuation of feral or free-roaming cat colonies or feeding, sterilization, or Trap, Neuter, and Release programs.
不妊去勢プログラムは、野良猫および自由に徘徊している猫の個体数の抑制管理には効果がなく、生態学的な悪影響に対処していません。
以下に詳しく説明する理由により、TPWD(テキサス公園および野生生物局)は、野良猫および自由に徘徊する猫の一群管理、または猫への給餌、不妊去勢、トラップ、リリースの計画の作成または継続することを支持しません。

日本では大変誤解されていますが、アメリカ合衆国においては、野良猫の数のコントロールはアニマルサービスが捕獲して殺処分する方法が一般的です。
TNRを制度化して、公的に認めるのは)郡、自治体レベルですが、極めて例外です。
アメリカ合衆国には、郡が3,100、自治体が84,400程度ありますが( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E3%81%AE%E5%9C%B0%E6%96%B9%E8%A1%8C%E6%94%BF%E5%8C%BA%E7%94%BB )、TNRを制度化して認めているのは、わずかに100十数郡・自治体にとどまっています。 https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_governments_supporting_trap%E2%80%93neuter%E2%80%93return
むしろTNRを違法とし、懲役刑を科す郡・自治体が多いのです。
TNRをしたことで逮捕起訴され、実名報道されたミズーリ州カンザスシティの女性もいます。https://www.columbiatribune.com/7889f0d9-aa86-574f-95bf-afa106933f84.html

それらの事実は、アメリカ合衆国においてはTNRは猫を減らす効果がなく、有害なだけであるという認識が背景にあるのではないかと思います。
なお、ドイツでは公的なTNR制度はありません。

3、猫を減らさなければならない最も緊急性が高いケースは、猫の食害にあっている希少生物の生息地です。
もしTNRに猫を減らす効果があれば、そのような地域でTNRが採用されるはずです。
しかしTNRは日本以外では、都市部にかぎって。例外的に行われています。
たとえばアメリカでは、島しょ部のノネコ根絶では駆除一択で、「射殺、毒餌、わな、ウイルス感染」が採用されて根絶に成功した例が多数あります。
TNRが採用されたことはありません。
http://www.issg.org/pdf/publications/island_invasives/pdfHQprint/1Hess.pdf#search=

オーストラリアなどの、猫により生態系が脅かされている国では、ノネコ野良猫を減らす対策は、駆除(殺処分)一択です。
TNRに猫の削減効果があるのならば、これらの地域で採用されているはずです。

TNRによる猫の減少効果は完全に否定できるものではありません。
しかし成功するためには、きわめて厳しい条件をクリアしなければならないと思います。
ですからTNRにより猫を減らすのは、現実的ではないでしょう。

*敬称を略させていただきます。

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