狂犬病集合注射参加の心得
多くの犬にとって注射はうれしいものではありません。
自治体が実施する狂犬病予防の集合注射会場にはたくさんの犬が集まるため、不安や緊張から興奮して暴れ、よその犬と喧嘩をしたり人を噛んだり逃げ出したりすることがしばしばあります。
そうならないよう、集合注射に参加する心得をまとめました。
【登録と狂犬病予防注射】
●平成7年から犬の登録は生涯1回になりました。
集合注射の会場では注射と同時に飼い犬の登録申請をすることができます。
登録がまだの飼い主は登録をして鑑札の交付を受けてください。
●生後91日以上の犬には年1回の狂犬病予防注射接種が法律で義務付けられています。
接種後、狂犬病予防注射済票の交付を受けてください。
●狂犬病予防注射の接種には、一般的に毎年春に地域の公民館等を会場として獣医師が出向いて実施する集合注射と、動物病院に連れていって接種する個別注射の2方法がありま
す。
ただし、病院によっては狂犬病予防注射の接種をしていないところもあり、また注射はしても登録や注射済票の交付手続きをしていない病院もあります。
その場合は狂犬病予防注射済証(証明書)を病院から受け取って行政機関へ持参してください。
【注射予定日の前に】
●事前に配布された狂犬病予防注射の説明書をよく読み、注射の意義や目的および注射前後の一般的な注意事項を理解しておいてください。
●注射予定日約1週間前から犬をよく観察して健康チェックをしておいてください。
●病犬や老犬、健康に不安のある犬は事前に動物病院で健康診断を受けることをおすすめします。
●冬生まれの仔犬はワクチン接種・狂犬病予防注射・フィラリア予防が同時期に重なります。
副作用を出さないためには一定の接種間隔をあける必要がありますので事前にかかりつけ病院に相談をしてください。
●事前に配布された問診票に犬の健康状態を正しく記入してください。
[問診票 項目例]
飼い主さんの住所・氏名・電話番号
注射を受ける犬の名前・種類・性別・生年月日・毛色・体格(大型・中型・小型)
犬の食欲や元気が普通ではない(はい・いいえ)
下痢や吐き気、咳や呼吸の異常がある(はい・いいえ)
1年以内にてんかん発作等の健康上の問題があった(はい・いいえ)
犬が人を噛んで狂犬病鑑定がまだ済んでいない(はい・いいえ)
犬が発情中・妊娠中・授乳中である(はい・いいえ)
1ヶ月以内に他のワクチン注射を受けた(はい・いいえ)
生後3ヶ月以内である(はい・いいえ)
【集合注射の当日】
●必要書類・費用(つり銭のないように)・ウンチ袋を忘れずに持参してください。
●犬の性格や健康状態を把握していて、しっかりと犬をおさえられる人が会場に行ってください。
●安全のため、小さなお子さんの同行は避けてください。
●よその犬と喧嘩になったり人を噛んだり逃げたりしないよう犬をしっかり制御してください。
力の強い犬や大型犬、緊張によって攻撃的になってしまう犬の場合はなるべく大人2名以上で行き、1名が犬のリードをしっかり持ち、もう1名が会計をすると安全でスムーズです。
●不安や緊張から攻撃的になってしまう犬には口輪を使用してください。
●首輪や胴輪がゆるすぎたりリードから離れて犬が脱走しないよう注意してください。
長く伸びるリール式リードはストッパーをきちんとかけてください。
●係員の呼びかけや掲示されている案内に従い、集合注射の円滑な運営に協力してください。
●飼い主の緊張が犬に伝わると思わぬ事故の元になりますので、係員や獣医師に対し飼い主がリラックスして接している態度をとるようにしてください。
【注射を受ける前に】
●注射の前に獣医師による問診があります。
正確に答えてください。
●獣医師によって注射不適当・要注意とされた犬は接種を猶予されることもあります。
獣医師と相談し、健康に不安のある犬に無理に注射をすることは避けてください。
【注射の受け方】
●獣医師の指示の通りに犬を保定(しっかりおさえること)してください。
首またはお尻に注射するのが基本ですが場合によってはその他の部位に注射します。
注射の効果はどの部位でも変わりません。
●安全で確実な保定をするには犬の首と頭、胴体をしっかりおさえます。
犬が頭を振ったり胴体を反らしてもがいたりしないよう注意してください。
●保定に自信がないときは獣医師にそれを伝えてください。
●犬がじっとしていれば注射は一瞬で済みます。
注射し終わったあとも犬が暴れないようによく注意してください。
●飼い主自身が犬に咬まれないよう十分に気をつけてください。
犬の保定の仕方−誰でも出来る犬のおさえ方実例集 (注意:保定方法は現場の獣医師の指示が優先です。参考程度にご利用ください。)
【注射後の注意】
●極めて低いですが注射による副作用の危険性があります。
注射後の犬の様子をよく観察してください。
●注射後3〜4日間はなるべく安静にして、過激な運動・交配・入浴等は避けてください。
●他のワクチンを注射する場合は獣医師と相談の上、最低でも2週間以上の間隔をあけてください。
●注射後なんらかの異常が認められた場合はすみやかにかかりつけの動物病院に相談してください。
【翌年の注射までの期間】
●狂犬病予防注射の接種済み票や鑑札は常に犬が身につけていることが法律で定められています。
注射済み票や鑑札は首輪や胴輪に着けておくと迷子札にもなります。
外れて紛失しないようしっかりと着けてください。
●注射済み票や鑑札を紛失した場合は再交付の手続き(有料)ができます。
【ふだんからしつけを】
●犬が不安や緊張から興奮して暴れたりしないよう、ふだんから犬を制御できるようしつけをしておいてください。
●抱っこできるサイズの犬は抱っこを嫌がらないように慣らしておくと注射のときの保定が楽です。
●注射のときにどうしても暴れてしまう犬には危険防止のため口輪の使用をおすすめします。
ふだんから口輪に慣らしておいてください。
【備考】
狂犬病予防注射は国の法律である狂犬病予防法によって実施されるものです。
この法律は、狂犬病の発生を予防し、その蔓延を防止し、およびこれを撲滅することにより、公衆衛生の向上および公共の福祉の増進を図ることを目的としています。
狂犬病はひとたび発生すれば多大な悲劇を生む恐ろしい病気です。
日本では1957年以後患者の発生はありませんでしたが、1970年ネパールからの帰国者1名、2006年フィリピンからの帰国者2名が狂犬病を発症しました。
今でも世界の国々では毎年多くの人が狂犬病で亡くなっています。
通常、狂犬病はヒトからヒトへ感染することはありませんが、狂犬病発生国から日本へこの病気に罹患した動物が入ってくることは考えられないことではありません。
実際、貿易船などに乗ってきた犬が正当な動物検疫を受けずに日本に上陸する例も報告されています。
狂犬病を防ぐことは公衆衛生の向上と公共の福祉の増進という本来の目的とともに、犬を飼う人と飼われる犬自身の暮らしを守るという意味があります。
そのためにも年に1回必ず狂犬病予防注射を受けなければなりません。
円滑に注射を受けるためにこの心得を参考にしてください。
心得利用上の注意:このページを資料としてご利用されることに著作権上の制約を加えませんが、出典は獣医師広報板であることはご明記ください。
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[狂犬病集合注射マナー意見要望特設掲示板過去発言]
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