獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-199901-218

ウサギ蟯虫とイベルメクチン
投稿日 1999年2月9日(火)20時08分 プロキオン

2月7日のくしだんなさんへ

ウサギ蟯虫についてですが、書き込みを読みかぎり、イベルメ
クチンは有効だったのではないかと感じた1人です。
この点については私も素人ですので、「ウサギ学入門」の著者
である斎藤久美子先生に問い合わせてみました。

「無効である」との記述の根拠はアメリカの複数の文献に獣医
師達が記載していることがもとになっているようです。その大
元は「J Appl Rabbit Res 」に記載された論文だそうです。

くしだんなさんも斎藤先生のことはご存じだと思いますが、先
生は臨床医です。先生のところへも友人の獣医師から、蟯虫に
も有効のようだという話もあったときいております。
ただ、臨床医が本を執筆するとなると1〜2例の話をもって有
効であるとは書けないと私は考えています。

イベルメクチンはウサギへの適用はとれておりません。したが
って製薬メーカーからのデーターも手に入りません。
ウサギの診療そのものが発展途上なのです。このような状況下
においては、執筆には文献的な裏付けが優先されますし、学理
的な話よりも実体験の方がまさってしまう場面にも遭遇するか
もしれません。

くしだんなさんの友人のウサギにイベルメクチンを投与した先
生がイベルメクチンを投与するべきと考えた根拠は分かりませ
ん。
単に片利共生であっても、害が少なかろうと寄生虫はいない方
が良い考えたのか、すぐ側にイベルメクチンがあっただけなのか、
実体験として知っていたのか、あるいは そんなこと無関係にた
だ使用しただけなのか、推測の域をでません。
ご不審を感じた点は直接、その先生に聞くよりないのですが、友
人の方もわざわざそちらの病院へ行かれたのなら、ウサギの診療
もOKの先生ということのように考えられます。

そして、肝心なイベルメクチンの安全性ですが、馬用の製剤はダ
メとか、子猫には禁忌とか私は聞いております。
一般に200〜250マイクログラムで線虫等の寄生虫やダニへ
の効果が見られ、600マイクロくらいになると下痢・散瞳・沈
鬱・運動失調・不全麻痺・横臥・昏睡等の副作用が見られるよう
になり、コリー犬のような犬種では死亡例も出るそうです。
40000マイクロになると非感受性犬にも死亡例が出てくると
なっています。
先にあげた子猫の禁忌というのも本によって、3月齢であったり、
4月齢であったりです。ただし、今回とは逆な話ですが子猫に適
用してもなんともなかったという話も少なからず聞いております。

そして、ある種の疾病に罹患した犬に投与するとこれらよりも遥
かに少ない薬用量でも死亡する事例もあります。

投与される動物の種類・月齢・健康状態で安全性も変わってくる
のです。
まあ、このように書くと不安が増してしまうかもしれませんが、
本来は牛や豚の消化管内寄生虫やダニ等の駆虫が目的で認可され
た薬です。それ以外の動物や目的でしようする場合はやはり獣医
師の裁量によるところが大きく成らざるを得ません。
そして、ウサギの診療は先に述べたように発展途上なのです。

この薬用量も体重1キログラム当たりの投与量ですが、私自身は
ウサギやハムスターはこれらの投与量比率でいくと犬よりも大用
量に耐えてくれるように感じています。
くしだんなさんの友人のウサギに投与された量は安全な量であっ
たものと考えております。

斎藤先生のメールは次のように結ばれておりました。

まだまだ、未知の分野だけに、昨日の常識が今日はくつがえると
いうことが、いっぱいあるはずです。私も自分が活字にした内容
が何年もしない間に古めかしい内容になっていると思いますし、
またそうあってくれなければ、と切に思っています。


今回、少し長くなりましたが、斎藤先生に問い合わせをしたのは
私自身の勉強のためですが、ウサギBBSのかおりんごさんのお
世話になったからです。
質問者はくしだんなさんですが、ウサギBBSのみなさんの参考
になれば幸いです。
斎藤先生はご多忙にも関わらず、当日の内に返事を下さいました。
書き込みが遅れたのは、私の事情によるものです。

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