獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200104-201

re教えてください
投稿日 2001年4月19日(木)23時41分 はたの

獣医師ではありませんが、1畜主として、ご参考まで。

アコさまはどうなさりたいのですか?
「泣き寝入りしかないの」か? ということであれば、「そうとは限らない」と思います。
謝罪や花を送って来た、という事実の詳細にもよりますが、動物病院側が非を認めたのでしょう。であれば、裁判で勝つ可能性も出てきます。
ただし、アコさまが満足するほどの慰謝料がとれるか、というと疑問です(命はお金に換えられない、といつたラチもない議論にはここでは踏み込みません。命をお金に換えるのが法律というシステムのひとつの役割ですから。我々が望むと望まないとに関わらず)。
もっと謝罪を! なのでしょうか?
すでに非を認めた動物病院をもっと追い込んで、アコさまの満足以外に何かが生まれますか? アコさまも、今の激情が去ればかえって後悔されるかもしれません。

ヒトの治療であれ動物の治療であれ、病院にお任せ・・・という時世であれば、良し悪しは別として、それはそれで完結していました。
いまはそうではありません。過誤があれば追求したい、わけですよね。であれば、お任せ時代と異なり、患者本人であるとか、患者・患畜の家族にも、「文句をつける権限」と引き換えに、「医療者を監視する責任」が生じているのだと思います。
保定の仕方が下手だと思ったら、VT/AHTであれ獣医師であれ、「やめろ」と言う権利がアコさまにありました。逆にいえば、その権利があるにも行使せずに任せた責任もあります。「素人でわからない」のは確かですが、「わからないのは飼い主としての勉強不足」でもあるのです。預かっている命に対して最終的な責任を負っている、権限を持っているのは獣医師やVT/AHTではなく飼い主なのですから。
その動物病院に任せた責任がアコさまにはあります。

むろん、その動物病院が、社会が期待する専門家としての責務を怠っていたり、要求される技術水準を明らかに下回っていたのなら、裁判で責を問うことは可能です。

要は、法的措置をとるかとらないか、の選択になります。泣き寝入り以外の選択肢は法的措置を取る、ということになります。裁判まで行かずにアコさまの心が納得する、といった都合のいい方策は原則的にはない、と思います。

しかしですよ、裁判で勝っても、勝った側には満足感は残らず(ご愛猫は返ってきません)、負けた側には不満が残ります。
長い目で見ていいことか、というと疑問です。

私自身、つまらない麻酔事故でネコを失っています。当時、かかりつけの病院には、全国水準からすると遅れた麻酔設備しかなく、拮抗薬も間に合わずに、私が見ている前で激しく痙攣しながら死にました。お粗末さを言い立てることも不可能ではありませんでした。けれど・・・それって不毛ですよね。死んだものは返りません。であれば、徒に罪を言い立てるより、死を次に生かすほうがマシだと判断しました。謝罪されましたが、できるかぎり自制し、獣医師を慰めるように努めました。失敗から学ぶ機会を与えなければ、VT/AHTも獣医師も育たないのだ、と自らに言い聞かせつつ。だって、「OK、やってくれ」と言ったのは自分なのですから。仮に病院側からの情報提供不足があったとしても、それを見抜けなかったのは自分なのですから。アコさまのご愛猫の例でいうなら、肺炎のおそれがあるかないか、検査結果について情報提供しなかった病院側のミスがあったとしても、「検査結果の解釈について説明を求めなかった」責任はアコさまにあるのです。それを思いつかなかったり、気後れして聞きにくかったのだとしても、それらの原因となるのはアコさまの勉強不足です。命を預かる「最終的な責任」というのは、そのぐらい重く、全うするのが大変なものなのだと考えています。
前記拙宅のネコでは・・・それだけが原因と奢るつもりはありませんが、その後、その病院は、麻酔に対して少しはセンシティブになってくれています。私が希望するよりはそれでも1世代古いガス麻酔ですが、私が知りえない経営面もありましょうから、無理をいう筋でもありません。麻酔が難しそうな場合で、緊急度が低いなら、遠方の大都市の第二かかりつけに行けばすむことしですし。さらにいうなら、イヤならその病院を使わなきゃいいのです。

アコさまも、VT/AHTや獣医師を「責めないでいられる」自信がついた段階で、なるべく短く、「今後に生かしてほしい」旨伝えられてはいかがですか?
アコさまの感情的なもやもやと、今後その病院にかかる動物たちの幸せとは分けて考えませんか? 前者は、裁判に訴えるならそれでよし、訴えないのなら、少なくとも病院に向けて発散はせず、自分の中で処理しませんか? 病院をではなく、最終責任者としてのご自身を責めるなどして。
後者を重視しませんか?

泣いたり喚いたり無言で暗くなったり大酒飲んだり、悲しみを処理する方法はいろいろあります。悲しみや口惜しさはそれ単独で処理しませんか? 病院にあたるのはやめませんか? 書き込みから拝察するに、ミスではあっても、悪徳によるものではないのですから。
病院スタッフを育てていくことは、結局は畜主のメリットになるのですから。ミスを今後に生かしてもらうためには追い詰めないことが大切だと考えます。窒息死させたVT/AHTや、それを監督していた獣医師だって、後悔にかられていることでしょう。特に、「お預かりしている」動物を手の中で死なせてしまったVT/AHTは、ショックを受けているのではないでしょうか。
感情的になって追い詰めたら、後悔を今後に生かす方向ではなく、自己防衛的に意固地になってしまうでしょうから。

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