獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200104-247

「安楽死」「窒息死」
投稿日 2001年4月22日(日)14時19分 はたの

おくちゃま様。

 私自身、避妊去勢推奨派です。「産ませない個体に処置する」どころか、「あえてブリードする個体のみ処置しない」のが常識となってほしい、と願っています。

 が、だからといって、保健所の殺処分方法を徒に非難すべきとは思いません。おくちゃま様が意図的に使っておられるのかどうかはともかく、「処分の悲惨さ(や処分数の多さ)を強調することによって抑止力とする」という戦略が在り得るのはわかりますが、指示しません。保健所のスタッフも殺したくてやっているわけではありません。であれば、「不幸な個体」を減らそうとするとき、不幸な死の存在を知る者は、保健所と力を合わせて行うのがよいのではありますまいか。保健所を悪者にせずに。

 「安楽死」あるいは「適切な殺処分の方法」についてはいくつかのガイドライン等もあり、それらのガイドライン自身の妥当性や、あるいは現実に行われている方法がそれらガイドラインに合致するかどうかについても議論があるところです。
 「ガスによってもがき苦しんで死ぬ」から現行の方法は「窒息死であって安楽死ではない」、というご意見を述べられるのはご自由です。が、そうだと認めないのは「誤解だ」とするのはいささかフェアネスを欠きましょう。
 森の猫さまはカギカッコつきで「安楽死」と書いておられるのですから、なおさらに。

 おくちゃまさまが述べておられる「ガス」はおそらくCO2のことでしょうけれど、たしかにCO2による死が、動物にとって最も苦痛が少ないかには疑問があります。しかしながら、さまざまな制限要因を考え合わせると仕方のない方法であろうかと考えています。致死性の高いガス、あるいは経口投与、注射、電気的なあるいは物理的な方法などが検討されていないわけではありません。
が、たとえば致死性のガスは、施設周辺住民の理解が得られるか、安全性が確保できるか、また法的な問題があります。経口投与は食欲がない個体には使えず、嘔吐や投与量のバラつき、法的な問題があります。
注射、電気的なもの、物理的なもの(撲殺等)は実施するスタッフの安全性が確保できません。スタッフの安全性を確保するためにしっかり保定するのは動物にとってもよろしくないでしょう。

 ケージ床の設計や運営状況によっては、CO2がうまく行き渡らずに死まで時間がかかることも知られています。しかしそれはCO2自体の問題点ではなく、運営の問題です。改善の要はありますが、運営に問題が生じるのは我々国民がそこに十分なお金をかけていないからであって、保健所の責任ではないでしょう。CO2それ自体は、最善ではないにせよ、それなりに有効であって、安全性その他と考えあわせれば相当の妥当性を持ちましょう。
 それなりに妥当ならいくら殺してもいい、とは思っておりません、為念。

 
 

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