獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200201-154

レス、2題
投稿日 2002年1月21日(月)17時54分 プロキオン

1月19日の ころさんへ
フェレットの副腎疾患で「L」を使用しているということですが、私は国内で
はT社の製品しか知りません。
この薬品の使用例についてはポトマックの某先生が症例報告されているはずで
すし、国内での使用例もこれに準じているものと考えています。この医薬品に
ついてはインターネットで情報交換されているのですが、誤解や誤認が多いと
いうことで、その先生は150例の症例に基づいて報告していると聞いていま
す。
そして、ころさんのお書きの内容もやはり混乱しているように私には受け取れ
ます。フェレットの場合、あまりに早期に避妊去勢が実施されており、本来の
成体として完成される前のできごとであり、体はエストロジェンやテストステ
ロンを必要としているのです。このため受精卵から発育する過程で、発生分化
の起原がごく近い副腎が、この代償をしようとして本来の機能以外の作用もお
こない始めると仮説の説明がなされています。
もとより、本来の機能とは別のものであり、コントロールの効くものではなく、
副腎本来の機能も過剰に働く事となり、脱毛、雄の排尿困難、雌の陰部腫大、
雄性の回帰や攻撃性の出現等が問題となります。我々臨床医が遭遇するのは、
やはり脱毛が最も多いのではないかと考えられます。そして、骨の脆弱化に関
する報告はこの先生においても言及しておりません。

四肢で歩行する動物(犬猫も含めて)と人間の閉経後の骨粗しょう症を同一の
視点から捉えることに不自然さがあるのです。栄養の要求量も違いますし、寿
命も違います、歩行形態も体重負荷率も違います、筋肉や靱帯の強度も異なり
ます。
何度も書いている言葉ですが、獣医師の世界には「猫は小さな犬ではない」と
いう言葉があります。人間も犬も猫もフェレットもみんな異なる生き物なので
す。
ラブさんへの最初のレスに書いたように、避妊手術と結び付けた症例報告とい
うものは目にした事がありません。

蛋白同化作用というのは、むろん血を作り筋肉や靱帯等の組織を増強する作用
に他なりません。これは雄であればテストステロンの仕事になりますが、雌で
もなければ困る仕事です。フェレットの副腎疾患ということであれば、性ホル
モンという表現は問題を複雑にしてしまいかねません。

副腎疾患であれば、副腎皮質の機能を削って(こういう表現が使われますが)、
改善を図るという目的で治療が実施されます。そして、犬猫では良く使用される
医薬品がフエレットではほとんど効果が見られないということで、外科的な処
置が選択されることになります。
ころさんが今使用されている薬は、手術という選択枝以外のものですから、こ
れは本来は朗報です。
しかし、このプロトコールは常に変更されるべきものであり、副腎そのものも
変化があるわけではないようなのです。そのまま温存されているようなのです。
某先生もそのことに言及しており、第一の選択枝は手術であると発言されてい
るそうです。
生体は、外部からの多すぎるホルモンの移入があれば、必ず、アンチホルモン
という形で抵抗します。「L」の効果が無くなったときの医薬品が想定されて
いる以上、このような問題は常につきまとうと御考え下さい。

そして、ころさんの主治医の先生が治療に「L」の使用を選択している以上は
ころさんの質問には主治医の先生が答えるべきかと思いますし、また、ころさ
んもそうしなくてはなりません。
この医薬品を使う以上はそれなりの知識をもった先生と私は考えます。そうい
う主治医の先生を無視してしまってはいけません。
少なくとも私はその薬を使用した経験もありませんし、フェレットの診療はや
めた人間ですので、本来レスをつけるのに適格とはいえませんね。


1月21日の えみりんさんへ
今までの避妊去勢後の骨疾患のやりとりを読んで、卵巣を残しての避妊手術を
御希望とのことですが、私は推奨できません。
手術手技としては、そのような手技がかつて用いられてきたことがあるのです
が、卵巣をのこしたままでは「断端子宮蓄膿症」の危険を残すことになるから
です。そして、このような疾病が発生した場合、処置が困難になることが予想
されるからです。
これは特段私だけの個人的に意見ではなく、他の獣医師の先生方にも賛同して
いただける考えだと思いますよ。

人間では更年期障害の問題もあり、子宮疾患や卵巣疾患において、できうる限
り組織を残すようにしていますが、犬や猫の場合では残すことの方がデメリッ
トが大きいのです。
今までの一連の話から出ている骨の問題は、よほど栄養状態に問題のある犬や
猫でもない限り、心配なされる必要はないはずですよ。

上記に書いた理由から私は、当初ころさんの書き込みにはレスしないつもりで
したが、えみりんさんの書き込みで、どうも犬猫の避妊手術において、骨に悪
影響がでるのだという考えが定着しては困るので出て来ました。






◆獣医師広報板サポーター◆
獣医師広報板は多くのサポーターによって支えられています。
以下のバナーはサポーターの皆さんのもので、口数に応じてランダムに表示されています。

サポーター:新日本カレンダー株式会社ペピイ事業部様のリンクバナー

サポーター:ペットコミュニケーションズ株式会社様のリンクバナー

サポーター:ペット用品通販Gズ\ィエ.COM有のリンクグオー

あなたも獣医師広報板のサポーターになりませんか。
詳しくはサポーター募集をご覧ください。

◆獣医師広報板メニュー
獣医師広報板は、町の犬猫病院の獣医師(主宰者)が「獣医師に広報する」「獣医師が広報する」
ことを主たる目的として1997年に開設したウェブサイトです。(履歴)
サポーター広告主の方々から資金応援を受け(決算報告)、趣旨に賛同する人たちがボランティア
スタッフとなって運営に参加し(スタッフ名簿)、動物に関わる皆さんに利用され(ページビュー統計)
多くの人々に支えられています。

獣医師広報板へのリンクサポーター募集ボランティアスタッフ募集プライバシーポリシー

獣医師広報板の最新更新情報をTwitterでお知らせしております。

Copyright(C) 1997-2024 獣医師広報板(R) ALL Rights Reserved
許可なく転載を禁じます。
「獣医師広報板」は商標登録(4476083号)されています。