獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200201-191

フィラリア症について
投稿日 2002年1月25日(金)07時21分 Big 1

獣医師のBig 1です。
 フィラリアの治療は、寄生数や病状でさまざまです。
フィラリアの治療に関することだけでも小冊子が一冊できるほどで
す。とりあえず、ほんのエッセンスだけ書いておきます。

治療方針をたてるためには、フィラリア成虫の有無および寄生状況
の確認と、心機能および肝・腎機能の確認をしてからになります。

フィラリア成虫の有無については、抗原検査キットが出ていますか
ら血液検査で分かります。寄生状況の確認はMRIと大げさなこと
をしなくても、エコー検査で簡単にできます。

I.寄生しているフィラリア成虫に対する処置

1.外科手術による摘出
 一般には、フレキシブル・アリゲータ鉗子という特殊な器具を頚
静脈から心臓に送り込み、肺動脈内(通常はここに寄生します)にい
るフィラリア成虫を摘出する方法が行われています。この手術はX
線透視下で行われますので、それなりの設備のある病院でないとで
きません。この手術の経験十分な獣医師にとっては、麻酔に十分に
耐えられる状態の犬であれば、安全率の高い手術といえます。
私の経験(自分の病院での百数十例と勤務医時代の三百例以上)では
麻酔に問題のないかぎり、肺動脈内に寄生する成虫の摘出手術では
死亡例はおらず、極めて成功率の高い手術であると考えています。

2.注射による駆虫
 成虫駆除剤を注射することにより、肺動脈にいる成虫を殺します。
殺虫されたフィラリア成虫は肺動脈内で分解されることになります。
寄生数が多い場合、死んだ成虫が肺動脈の循環を妨げて突然死など
を起こす場合もあります。

II.循環不全等の症状に対する治療

 フィラリア寄生により、循環障害を中心とするいろいろな症状が
起こります。これらはの症状は急性フィラリア症(フィラリア成虫
が右心房室弁部に移動して発症します)を除き、普通は感染後数年
近く経ってから出始めます。
これらの症状に対する治療は、内科治療によることになります。
よく使われる薬剤は、ACE阻害剤、抗血小板剤、利尿剤、ステロ
イド剤などで、単独あるいは組み合わせて使用されます。
なお、急性フィラリア症の場合は早急に外科手術による治療を施す
必要があります。

III.ミクロフィラリアについて
 ミクロフィラリアは蚊の体内に入って3期幼虫にまで成長してか
らでないとそれ以上の成長はできません。血液内にとどまったミク
ロフィラリアは1年〜1年半で死滅します。従って現在は無理に殺
滅することはしなくなってきています。様子をみながら予防剤を投
与するのは、新たな感染を防ぐことにより、フィラリア成虫の寿命
による死滅をまつということです。寄生数が少ない場合には、この
方法が有効です。

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