獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200208-184

reハクさま
投稿日 2002年8月24日(土)22時26分 はたの

まずはおめでとうございます。
 落ち込まれることはありません。
 一歩前進です。大いなる前進です。
 だって、「シンク以外のところで排便する」という、「質的な転換」に成功したのですから。一番の難所を見事乗り越えたのです。
 この際、大切なのは、ご愛猫の立場からどういうことがおきたか(トイレの質的な転換に成功!)であって、ハクさんの狙いの何割が成功したかではないのです。最初の試みで完全な成功(トレイで排便してくれる)を収めるのを期待し、そでなかったからといって失望するのは少々ムシが良すぎます。

 少し整理します。
 ご愛猫の考えでは、トイレとしてふさわしいのは、
1番目にシンク、なわけです。
それが使用不可になり、「トレイ」と「コンロ」という選択肢ができました。ご愛猫にとっては、「コンロ」のほうが「トレイ」よりトイレとしてふさわしく見えたからそちらを使った、ということになります。
 いいまでは排便にふさわしいトイレといえば「シンク」しかなかった、つまり絶対的な認識だったのが、複数箇所を比較して選ぶという相対的な認識に変わったのですから、「質的な転換」で「大いなる一歩」なのです。
 次は、新たにできた相対的な認識の中で、「トレイが一番マシ」にすればよいわけです。コンロも覆ってしまえばよいってことになります。他(ステン作業台とかでやりそうですね)でやりそうんならそこも使用不可にします。使えなければ選択肢から外れるのですから。
 ここまで第一段階。

 次にそれを継続します。一回や二回トレイでやってくれただけじゃ安心できませんものね。しばらくの間、トレイを使わせれば、それが習慣になります。シンクを忘れます。シンク(やコンロ)を忘れるまでは物理的な妨害を続けます。トレイに猫砂を少しずつ足していく・・・作業中もシンクには蓋。「砂を足す」ことでトレイのトイレとしての価値は目減りし、シンクに戻りやすくなりますから。
 
 そして、
>すぐステンレスのトレーへ連れて行きましたが
 こういった「干渉」は不要ですし、よくありません。
 「便意はある、だけどトイレ(と思い込んでいる)シンクが使えない、どうしよう」という葛藤状態にあってせっぱつまってイライラしているネコに接触して良いことは何もありません。「ココがトイレだよ」と教わった、なんて思いません。ただでさえイライラしている時に邪魔された、キー、っとなって当然なんです。人間だってそういう状況下では平静でいられないですよね。
 排便後にしても同様。ハクさんが教えたつもりでも、ネコは教わったとは受け取りません。排便場所を選ぶのはネコです。ハクさんではありません。ハクさんが教えた「つもり」でも、ネコに伝わらなきゃ無意味です。
 のんびりした性格ではないかもしれませんが、特に気性が荒いわけではなく、排便後に大騒ぎするのは当然なんです。排便というのは外敵に狙われやすい瞬間ですから緊張します。ふさわしく思えるトイレが使えなくなっていて、悩んで、でも便意はおしよせてきて、仕方なくふさわしくないトイレですませた、すますことができた。普通の排便以上の強い緊張から解放されて走り回りたくのは当たり前の反応なのです。
 いってみれば、ワールドカップ、アルゼンチン・イングランド戦で、4年分のあれこれがつまったPKを成功させた直後のベッカムみたいな精神状態なんです。そんなときに細かい指示してもしかたありませんでしょ。

 ネコ自身が悩んで選択することが重要です。ネコが選択しようとしているその時に触ったり声かけたりしてはよくありません。それがうまくいかない(普通の猫トイレを「教えよう」と試みられたわけですよね)からこそ、「その時」にあれこれ干渉するのではなく、「予め」物理的な工夫をなさってはどうかを申し上げているのですから。

 ハクさまのお宅の中を拝見したわけではないので、「トレイ」を優先順位一番にするための具体的な注意箇所すべてがわかるわけではありません。よく見回してみてください。知恵や工夫はこの段階で使ってください。エネルギーはすべて事前の工夫に回して下さい。

 いざ、ネコが排便しようとする時には、何もしてはいけません。声もかけません。誘導もしません。見てもいけません。耳をそばだててもいけません。気付いても緊張してはいけません。ほんとは考えてもいけません。気配を消してください。木化け、石化け、家具化けしてください。ネコが悩んで選択するのを邪魔しないでください。
 うまくトレイで排便したとしても、誉める必要はありません。というより、誉めてはいけません。興奮してれば誉めても聞えやしませんし、邪魔されたと誤解することもあります。排便成功はそれ自体が快感なので、誉めて動機づけを強める必要もないのです。
 むろん、失敗しても、一切叱ってはいけません。
 ネコがハクさんの希望を汲み取ってくれないのが悪いのではないのです。ネコの考えそうなことを先回りしきれなかったハクさんの負け、ということなので。といって落ち込むことはありません。あらためて「事前の工夫」に改良を加えればいいだけのこと。一喜一憂は無意味です。
 セッテングして、結果を待つ。思いどおりの結果がでなければセッティングを改良する、これだけに絞りましょう。

 普段においても、平静を保ってください。落ち込みそうになったりカッとしかけたら、九字を切るなり心の中で100数えるなりして落ち着いてください。
これからご愛猫は、慣れないトイレで排便するという難しい課題に直面するわけです。主役はハクさんではなくネコです。困難に立ち向かわなくてはいけないのはネコのほうです。彼または彼女がその困難に打ち勝てるように、サポートしなくてはいけません。同居のヒトの感情が揺れ動いていては邪魔になるばかりです。可能なサポートは、彼または彼女が乗り越えなくてはいけない壁を低くしてやること(だからいきなり普通の猫トイレでなく、シンクに似たものから始めるのがよいわけです)だけです。

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