獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200210-102

レス:法律について
投稿日 2002年10月13日(日)13時34分 プロキオン

10月12日の sadaさんへ

立場による見解の相違ということについてですが、これにはいくつかのものが
有ります。
1つ目は、簡単に言ってしまえば、同じ法律の同じ条文でも、取り締まる側と
売りたい側では解釈を異にするということです。

2つ目は、取り締まる側の内部の個人の考えが反影してしまう場合です。
我々が日常使用する言葉としては、「当分の間」や「しばらくの間」にどれほ
どの差異があるかは問題となりません。しかし、公用文となるとこの違いが定
められています。
法律を運用したり、許認可権限を持つ立場にあればひとつひとつの単語に注意
が必要となります。単純にこの条文はこのようにも読む事ができるということ
ではなく、このような目的や主旨に沿って書かれているという逐条解説も必要
になるわけです。
行政においてもさまざな考えの人間の集合体である以上は、その中においても
理解の程度に差が存在します。私が薬事監視員をしていた頃にも、同僚の中に
薬事監視員とは思えない意見を持っている者がいました。彼は熱帯魚とくにデ
ィスカスの愛好家であったので、どうしても魚関係の薬品の規制を緩和して欲
しかったということなのです。
しかし、魚の薬品流通こそ最も規制が緩いところですから、これよりも緩和し
てしまえば「動物用医薬品取り締まり規則」どころか、本体の「薬事法」まで
おかしくなってしまいます。
したがって、国においては時々薬事監視員を集めて研修を実施し、現在問題と
なっている事項について意見の擦り合わせをしたりします。

そして、3つ目に法律同士の見解の相違もあります。
これは、どういうことかというと、同じ薬事法であっても厚生省と農林水産省
とでは多少の温度差があるということです。私は家畜保健衛生所と人間の方の
保健所も両方経験していますので、これに気がつきました。
これを比喩的に分かりやすく述べると、獣医師法と医師法を例えると良いと思
います。
獣医師法においては飼い主による家畜の治療を不問としていました。わざと曖
昧な形にしてありました。法律が改正されても農林水産省の中には、今でも飼
い主による自己治療を黙認する考えが存在しているようです。
しかし、医師法であれば、自分の子供だからといって医師でないものが医療行
為を施す事を認める考えはありません。人間は個々が独立した存在であって、
家畜のような財産や所有物ではないからです。
ところが、「獣医療法」は「医療法」をモデルにして制定されているにも関わ
らず運用解釈において、旧獣医師法の考えを引きずっています。したがって、
この法律の条文の解釈について争った場合、モデルとなった医療法と比較して
みると「獣医療法」を制定した国(農林水産省)側が負けてしまう場面も出て
くる可能性もあります。
「医療法」は医師以外の医療行為を認めていないからです。したがって、「獣
医療法」における獣医師以外の獣医療の禁止の条文も自己所有家畜は除くとい
う文言はありませんし、運用解釈でそれを認めるとしたら、医師法や歯科医師
法を所管する厚生省サイドからは、そのような概念はないという返事が返って
くることになると思われます。
これが、法律や行政機関の立場による見解の相違の存在です。

4つ目に、重要なこととして、法律の不備というか穴があります。これは立場
によるというわけではないのですが、相違点としては大事なのであげておきま
す。
条文の構成、文言、助詞の使い方において、なぜか整合性のない不備な箇所が
ときおり存在します。
法律のレベルになると国会にかけなくてはなりませんので、今でもけっこうそ
のままになっていることがあります。
人間の方の薬事監視員や医療監視員の方に教えていただいたことがありますが
案外盲点で見落としているような箇所です。こちらについては、広く流布する
訳にはいきませんので、これ以上は触れません。
本来の意味における解釈や見解の相違というのは、このような箇所こそであっ
てしかるべきなのです。

最初にもどって考えるに、薬品やサプリメントを販売したい人間があれこれ理
由見つけてきたり、都合の良い解釈を振り回すのは、当たり前と言えばあたり
まえすぎることであり、いちいちかまっていられないというか、それをそのま
ま信じてしまうことの方が、私には不思議です。
自分で法律や規則・条例を読んで見て、おかしいと感じるものやうさんくさい
商品には手を出さない方が良いでしょうね。


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