獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200212-54

レス、2題
投稿日 2002年12月11日(水)16時48分 プロキオン

12月10日の 臣さんへ
ちょっと、確認したいのですが、尿のPHは測っていませんか? と言うのは
スツルバイトはアルカリ尿で結晶化しますが、蓚酸カルシウムは酸性尿で結晶
化します。
つまり、両者が同時に検出されるということに理論的に矛盾があるのです。む
ろん、100%の保証で私が言い切れるものでもないのですが、普通に考えれ
ば、やはり検査が正しく実施されていたかを検証する必要があると考えるのが
ものの順序です。

私が代診の時に 尿の結晶を見ていて「スツルバイトがあります」と先輩代診
に報告したら、「そんなはずはありません、ちゃんと良く見て下さい」と言わ
れてしまいました。AHTと2人で確認していたので、そんなはずはないと顔
に出てしまっていたのでしょうね。先輩は「尿のPHは酸性なんですよ、スツ
ルバイトであったら、おかしいでしょう」と続けました。

形態で言えば、スツルバイトは「西洋棺桶」で、蓚酸カルシウムは「四角錐を
上から見た図」になります。
でも、結晶の析出が短時間で行なわれた場合、スツルバイトの結晶も成長する
時間がたりず、正方形に近い形で蓚酸カルシウムに似て来てしまうのです。
これは比較的よくあることなので、以後必ず尿のPHは確認するようになりま
した。
この症例の場合は若い頃にスツルバイトが出てしまい、それ以後療法食でずっ
と尿を酸性化してきていたのでした。だから、その結果としての蓚酸カルシウ
ムの結晶ということだったのです。

治療ということになれば、スツルバイトであれば尿を酸性化する療法食を、蓚
酸カルシウムであれば尿を中性化する療法食を食べてもらうことになります。
両方をいっしょに食べさせるということでは、治療になりません。
原理原則から申しまして、尿のPH確認と結晶の再確認をするべきだと考えま
す。


12月11日の さつきさんへ
犬の乳腺腫の場合は、悪性化良性かの頻度はおよそ5割と言われています。
つまり、半分の症例は直接生命にかかわるものではありません。
乳癌という表現になっていましたが、これは悪性腫瘍であると確認済みという
ことになるのでしょうか?

悪性腫瘍に間違いが無いと言う事になると、こちらの場合は進行のステージと
転移の有無の確認が必要となります。この結果によって、手術も含めてどのよ
うな適応となるのかが検討されます。
その検討の結果、手術しないという結論に達したのであれば、化学療法剤によ
るケモテラピーか緩和療法を併用した支持療法ということになると思います。
「抗癌剤」について触れておられないのですが、こちらの選択はないというこ
とになるのでしょうか?
私が考えるには、乳腺腫であればプロポリスよりははるかに実効性のある抗癌
剤が存在していると思います。
また、10歳という年齢が手術しない理由となっていましたが、これは手術
しない理由としては不十分です。確かに高齢の犬では私達も手術を避けたくな
りますが、あるセミナーで講師の先生から「本当にできないと考えているので
すか?」とピシャリと言われてしまったことがあります。
重度の心疾患があるとか、充分なマージンが確保できない、あるいはすでに転
移してしまているとか、直接的な理由が欲しいところです。執刀する獣医師に
自分の技量に自信がないというのも、りっぱな理由になると思いますが、その
時には別の病院を紹介するのが本筋です。
外科的に切る事ができるものは切って、しかる後に化学療法剤を適応するとい
うのが、一番正面から向き合う方法だと考えます。緩和療法や支持療法は、こ
れらの適応がすでにないと言う場合の残された選択ではないでしょうか?

もし、すでにそういう状態であるという場合、あるがままの現状をすべて受け
入れる心づもりを固めるというのが飼い主の役目です。
耳障りな言い方になってしまい申し訳ありませんでした。




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