獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200306-77

獣医師の手は
投稿日 2003年6月11日(水)17時27分 プロキオン

獣医師の手は、誰であろうと全て血で汚れています。

動物の命を助けるべく仕事をしている臨床家といえども、それは同じです。
注射をうつ、薬を服用させる、どの治療行為をとっても、そこには医薬品の開
発と安全性試験があります。これを経ていないものはありません。
自らが動物実験をしなくても、その結果を利用しているのです。それでも私達
の手はきれいなのでしょうか? 汚れていないのでしょうか?

前回、私達獣医師は自分1人でなったのではなく、多くの命に支えられてなっ
ていることを説明しました。
臨床家というのは、そんな獣医師の中でもなにかしら、動物達に還元できない
か、人間として動物により近い立場に立てないのかと考えている部分がありま
す。そういう人間達であっても、やはり動物達の死によって知識や技術、道具
や医薬品を得るという宿命の下にあります。
それを否と否定してしまえば、何もできません。それでは獣医師の仕事はでき
ないのです。

実習をすべて逃げ回って過ごし、国家試験を通ったとして、開業医のもとでの
臨床実習をどうしますか? これもすべて逃げて通るのですか? 開業したと
して、自分の患者に医薬品でなくその辺にある工業薬品を自分で調剤して、注
射するのですか? それこそが動物実験ではないのですか? 安全性も確認で
きない自家製造の薬をお金をもらって自分の患者で実験するのですか?

そういう行為は職業人として認められることではないと思います。どのように
否定しようと嫌いであろうと、治療行為そのものが動物実験の結果に基づいて
いるのです。
それでも、自分自身が直接手をくだしていなければ、1つのシミもついてない
きれいな手だと言張れますか?

解剖実習で泣いてとりみだす学生が嫌われるというのは、獣医師を志す者なら
18や19になれば、自らが志す道が多くの動物達の犠牲の上に成立している
ことを理解できるからです。
それを理解できるからこそ、手が汚れることを厭う者を「勘違いしているだけ
」とか「ポーズだけの動物好き」として見なすのです。
みんな、誰よりも動物が好きなのですよ。好きだからこそ、獣医師を志したわ
けであり、只の愛好家ではなくもう一歩先に進みたいと考えているのです。
単純な「好き」よりも先にある「辛くても進まなければならない過程」「好き
だけでは済まされない道」を目指すのです。みんなとっても、やさしいのだと
思います。また、それだけ動物達のために真剣なのです。

臨床獣医師はね、そういう頑張り屋さんが選んだ場所なのです。今まで尊敬さ
れる獣医師に出会ったことがない。それはそう思っていてくださって結構です
が、いろんな思いや悲しみを口に出さないだけなんです。飼い主の前で獣医師
が一番先に泣いてどうします。
あくまでも動物実験や実習が嫌であれば、どうか別の道を目指して下さい!

獣医師の手は汚れています。汚れることを嫌がる、あるいはその認識さえもつ
ことができないのであれば、それは獣医師とは言えない。少なくとも私は認め
ることはできません。そんなペーパードライバーがハンドルと持つことの方が
危険です。
ポリシーを持つのは自由ですが、獣医師の仕事を知るべきです。

動物実験や実習に頼らないということは、従来の知見を否定していることにな
るのですよ! 誰からも何も教えてもらわずに、自分が1人ですべて実験して
体得していくということなのですよ。
誰かに教わること、書籍に記載されていることは、実験や実習を経ていないこ
となど何一つとして存在していません。そこにある動物達の死までも否定なさ
るのですか? 動物達の喜んでいる顔でも見えますか?
今から動物実験を否定する獣医師として、1人で一つ一つの検証を重ねていく
おつもりなのですか? そこにおいてどれだけの無駄と犠牲を積み重ねるので
すか? 
それとも、何も考えない、検証は動物実験になるからと検証もしないで獣医師
としてだけ振る舞おうということなのですか?

獣医師たらんと望めば、それはもう動物達の死と向き合うことは避けることは
できないのです。
動物達の犠牲を見てみぬ振りをすれば、フィクションの世界の獣医師のように
振る舞うことはできますが、動物達の犠牲を認識していなければ、動物達に感
謝することもできないし、その霊に報いることもできません。
たとえ、その手が汚れていようとも、私は動物達の温もりが感じることができ
る場所が良いです。神様にならなくてもよい、ビルを建てる程儲からなくても
良い、動物達と友だちで居られる場所が良い。それが私が歩いてきた道です。

獣医師になるには、目に映るものはしっかり認識して欲しいのです。最初から
見えていないとか、見えてない振りをするのでは困るのです。
誰だって、動物の犠牲は少ない方が良いのです!! そんなこと、口に出して
言わなければ分からない程鈍感な人間達ではないのです。わざわざ、口にする
ことが「動物好きの証明」でもないからだけなのです。



◆獣医師広報板サポーター◆
獣医師広報板は多くのサポーターによって支えられています。
以下のバナーはサポーターの皆さんのもので、口数に応じてランダムに表示されています。

サポーター:新日本カレンダー株式会社ペピイ事業部様のリンクバナー

サポーター:ペットコミュニケーションズ株式会社様のリンクバナー

サポーター:ペット用品通販Gズ\ィエ.COM有のリンクグオー

あなたも獣医師広報板のサポーターになりませんか。
詳しくはサポーター募集をご覧ください。

◆獣医師広報板メニュー
獣医師広報板は、町の犬猫病院の獣医師(主宰者)が「獣医師に広報する」「獣医師が広報する」
ことを主たる目的として1997年に開設したウェブサイトです。(履歴)
サポーター広告主の方々から資金応援を受け(決算報告)、趣旨に賛同する人たちがボランティア
スタッフとなって運営に参加し(スタッフ名簿)、動物に関わる皆さんに利用され(ページビュー統計)
多くの人々に支えられています。

獣医師広報板へのリンクサポーター募集ボランティアスタッフ募集プライバシーポリシー

獣医師広報板の最新更新情報をTwitterでお知らせしております。

Copyright(C) 1997-2024 獣医師広報板(R) ALL Rights Reserved
許可なく転載を禁じます。
「獣医師広報板」は商標登録(4476083号)されています。