獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200406-205

re:キャベツとシイタケ
投稿日 2004年6月18日(金)12時31分 投稿者 プロキオン

6月18日の そつママさんへ

かなり片寄った考えの方のようで、戸惑ってしまったと言うことのよう
ですね。私もそう感じました。

この世の中、タンパク質の元となるアミノ酸のアミノ基が存在するもの
は、すべての食品が発癌性があることになりますが、動物はタンパク質
を生きて行く為に必要としています。人間も発癌性の可能性ということ
は承知していても、やはり肉や魚を食べております。
また、塩素のあるところ、やはり常に環境ホルモンの存在が危惧されま
すが、生活環境の中から、それを除外することはできません。
太陽の光も電磁波であり、大気や大地そして宇宙から地上へ届く天然の
放射線もまた人間は拒絶することができません。

これらのものを「毒」と考えるのであれば、人間も動物も「毒」の中で
生きて行くように造られてしまっているということになります。

分かりやすく言えば、抗癌剤自身も、それ自体が発癌物質なのです。細
胞を傷つけ破壊する作用を有しているのですから、正常な細胞にとって
は無い方がよいことになります。
しかし、人間は、その投与方法と量を加減することによって、癌と戦う
ために用いることができます。

キノコ類が癌に効果があると言われるのは、その菌糸体に含まれるβー
グルカンが体細胞性免疫を刺激するからだと言われています。
体内に侵入した異物と免疫が判断するから、T−細胞がその異物を排除
するべく活動し、活発化するということになります。したがって、細胞
性免疫に余力があれば、これは効果が期待できますが、すでに疲弊して
しまっていれば、効果は期待できません。いつでも、どこでも、何にで
も有効というわけにはいきません。

抗癌剤もホリスティック医療も、つきつめれば、同じことをやっている
のに過ぎません。ホリスティックの方が、直接的な効果が分からないの
で、その分、思想的になってしまっているように感じます。其れ故、何
か魔法のような宣伝文句に走ってしまう方が見受けられます。
だから、違和感がつきまとうのでしょうし、逆効果ということにもなっ
てしまいます。
ただ、私個人としては、動物に対しては、自覚症状を感じとれないこと
と副作用のコントロールができないので、ホリスティック医療は動物向
きではないと考えています。

アメリカの方が日本よりも10年は先へ進んでいるという説は、アメリ
カ信奉者の方がよく言われる台詞なのですが、本当に進んでいるのでし
ょうか?
動物医療のオリジナルな発見や製造が、言う程にあるのでしょうか?
欧米は、動物と共に暮らしてきた歴史において、それは一日の長があり
ます。動物の医療に対してお金を費やすという下地が日本よりも遥かに
あります。飼い主は人間に実施されるのと同じレベルの医療を施して欲
しいと希望しますし、そのための費用も負担します。
ですから、獣医師もそれに応えようとします。結局は、それだけのこと
のように思います。日本の動物医療は、戦後からと言ってしまうと語弊
がありますが、仮にそういうことだとしても、昨今の情勢であれば、必
要な知識知見は遅滞なく入ってきています。
スパゲッティシンドロームと呼ばれるような終末医療をどれだけの日本
の飼い主が望むだろうかということです。日本人の動物感と大学の教育
システムが異なるというだけのことのように思います。

私の師承にあたる先生は、アメリカへも留学しましたし、人間の医科大
でも手術の勉強をしています。日本の大学では教えてくれなかったこと
を学ぶために自ら研鑽を積んで、小動物の獣医学を日本へ持ち込んでく
れた獣医師の1人です。
しかし、その先生が私に言ったのは、「今は、アメリカの物量にものを
言わせた動物医療が席巻しているが、やがてヨーロッパのような地域や
家庭に根ざした医療こそが必要とされるようになる」でした。

私は、日本中の動物病院が高度医療を目指す必要はないと考えています
し、また日本の動物病院のほとんどは個人商店にすぎません。
検査と手術、そして大量の薬品を望む飼い主が居ても良い反面、予防医
療や地域における感染症の防遏、そして老後の介護において飼い主の身
近に存在できる動物医療もまた必要なのです。

アメリカがなんでもかんでも進んでいるというのは、発想自体が固いの
ではないでしょうか。
アメリカだって、今、東洋の鍼灸を売りにしている病院は増加していま
す。漢方薬もそうですね。
( でも、漢方薬は人間でも毎年死者は出ています。副作用は当然あり
  ますよ。 )

つまるところ、どこでどのような医療を実施したいのかです。ニューヨ
ークのメディカルセンターのような医療を希望されているのであれば、
それは志が高くて結構なのですが、そのためにはより一層広い視野をも
たれた方がなお良い事でしょう。
逆に、アメリカ留学を帰国後の看板にしたいのであれば、それはあまり
いただけないです。
私の同門の女性獣医師は、アメリカの大学3校へ留学していますが、そ
れは売り物にしていません。私も経歴を見るまで知りませんでした。
彼女はすでに10年以上前に開業しています。もう、そういう時代では
ないと思うのです。

付記:消化吸収の点から言えば、キャベツやシイタケは、犬には必要あ
   りません。というか、利用できません。

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