獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200412-193

Re:子犬の世話、躾について
投稿日 2004年12月20日(月)16時21分 投稿者 パールちゃん

アズママさんへ。
10/25生まれですよね?
本来からいえばまだ母犬の愛情と保護を受けつつ、
兄弟姉妹たちとくんずほぐれつして心身を育てているはずなのが理想的な仔犬の成長環境です。
でも、アズちゃんは商品でしたから、なるべく小さく幼くかわいいうちが売り時でした。
たとえ体の具合が悪くてもね。
皮肉な言い方をしてしまいましたが、これがペット販売業界の現実です。
「むむぅ・・」と思いますが、そこは感情的に割り切らないとね。

さて、本題。

子育てには親の価値観や親自身がどう育ってきたかの経験が反映されます。
「これが正しい子育てだ」というのはないのです。
仔犬育ても同じだと思います。
たとえば、今はどうかわかりませんが、アメリカではベビールームを用意して、乳児も夜はそこでたった一人で寝かせます。
そのほうが自立心を養えるとか、親自身がゆっくり休めるという、ま、アメリカならではの個人主義が投影されています。
でも、日本では親が沿い寝をしたり、親の寝室にベビーベッドを置いたりします。
住宅事情の差もありますけどね。
仔犬を育てるにはどうしたらいいのかっていうのは、こういうアメリカと日本の違いによく似ているような気がします。

犬が犬を育てるときのことを少し書きます。
だいたい生後2ヶ月くらいまでは何をしても許すほど母犬は仔犬をかわいがります。
母犬は常に仔犬の近くにいます。寝るときも、目を開ければ仔犬が見える位置で寝ます。
生後2ヶ月を過ぎると母犬はちょっと厳しくなり、いけないことをしたときは母犬は仔犬をやんわりとたしなめます。鼻で押しのけたり、口でくわえて押さえつけたり。
この生後2ヶ月から3ヶ月にかけての約1ヶ月間に、母犬は仔犬に対して教えるべきことのほとんどを集中して教えます。
危険なものには近づかないこと、相手の嫌がることはしないこと、いけないことをすると痛い目にあうこと、等々。
この時期、母犬は仔犬とは少し距離を置いて寝るようになりますが、目覚めた仔犬が動き回ったり鳴き声を立てたりするとすぐに飛んでいきます。
生後3ヶ月を過ぎるとかなり厳しくなり、母犬はときにはガガッと怒って仔犬を噛んだりします。
でも、けして牙を食い込ませるまでは噛みません。
「前にも言ったでしょ。まだ、わからないの?」という感じです。
母犬はもう仔犬とは距離を置いて寝るようになります。仔犬が目覚めて動き回っても鳴き声を立てても、「困ったことは自分で対処しなさい」とでもいうように知らん顔をしています。
このようにして母犬は仔犬に自立することを覚えさせていきます。

私は、犬は犬らしくあってほしい、そのためにはイヌの習性になるべく沿いたいと考えているので、母犬が仔犬を育てるのと同じやり方で、距離の取り方・見守り方・叱り方などを真似しています。
そんな私から見ると、生後2ヶ月に満たない仔犬に対し、餌・トイレ以外は見に行くな、抱っこするな、舐めさせるな、構うなというのは「とんでもない!!」です。
それを許してしまうと後追いしたり吼えたりする犬になるなんていうのは「とんでもない!!」です。
けして、けして、そんなことはありません。
いつもいっしょに、なるべく近くになるべく長い時間いっしょにいて、ベタベタに濃いほうが、
人間の言うことをなんでも理解し、ときには何も言わなくても自分から理解し、
人も犬も我慢することが少ない自由度の高い生活が送れます。

物分りのいい、でもいつも人の顔色をうかがっているような控えめな子と、
やんちゃでイタズラでいつもハラハラさせられるけれど天真爛漫な子と、
アズちゃんはどちらになってほしいですか?
言ったことに「はい」と言うだけで自分の主張をしない子と、
自分の意志や感情をどんどんしゃべる(目やしっぽで)子と、
アズちゃんはどちらになってほしいですか?
前者なら今までのようにハウスに入れておいて餌・トイレのときだけ接すればOK。
それでも、いい子には育ちます。
でも、後者なら、今すぐハウスから出して、たっぷりの会話とたっぷりのスキンシップをしてください。
トイレを覚えるまではどこにでもお漏らしします。幼いのですから当たり前です。
お漏らしの片付けもトイレのお勉強も仔犬を飼うということの醍醐味です。
教えることを楽しんでください。

> 他のワンちゃん友達から言わせると、私は構いすぎのようです。

とんでもない!!
私から言わせるとアズママさんは構わなすぎです。
仔犬の、人への信頼や愛情を育ててあげるには、もっともっと構ってあげてください。
今と、今からの1ヶ月間は特にそれが大切です。
たくさん話しかけてたくさんさわってあげると同時に、
仔犬からもたくさん話しかけてたくさんさわってこられるようスキンシップを取ってください。
構いすぎてダメ犬になるなんてことはぜったいにありません。

犬はスイッチを入れたときだけ動くオモチャではありません。
今アズママさんがやっているハウスの使い方はスイッチのオン・オフをしているようなものです。
ハウスは犬自身が気に入っている安心専用スペースにしたほうがいいので、
いつでも自由に帰れる場所として覚えさせてあげてください。
だから、アズママさんがアズちゃんをハウスに戻したときに「いい子、いい子」ではなく、
アズちゃんが自分からハウスに戻ったときに「いい子、いい子」と言ってあげてください。

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