獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200506-76

フィラリアの治療について
投稿日 2005年6月12日(日)06時23分 投稿者 ぱたぽん

私が以前勤務していた動物病院は田舎で、フィラリア症にかかっている犬が何頭も来院していました。「つり出し手術」もひどいときは、一日3頭やったこともあります。
そこの病院では「つりだし手術」は急性症状に対する緊急手術でした。
フィラリアは心臓に寄生する虫で、蚊によって媒介されるのはご存知のことと思います。
1匹2匹感染したとしても、症状がでることはまれです。咳や腹水といった症状は、慢性の症状で、長年感染を繰り返し、何十匹も心臓の中に寄生し、心臓の肥大がおこり心不全が進行して起こります。これら慢性の心不全の症状が出てしまっている場合は、例え手術をして虫を取り除いても、心臓自体の形が変わってしまっていて完全に改善されることはありません。心臓の働きを助ける薬が一生必要です。一方、フィラリア症の急性の症状の場合、心臓から肺動脈に虫体が詰まって肺動脈塞栓症を起こすことがあります。朝元気だった犬が急に倒れ、舌は真っ青でゼイゼイしている。また、血液が溶血を起こすために、コーラのような尿(血色素尿)をすることもあります。心臓を聴診するとこの急性疾患特有の心雑音が聞こえます。この場合は緊急手術が必要で、頚静脈から器具を挿入して虫をつり出します。肺動脈内につまっている虫を取り除く手術ですので、寄生している全部を取り除くわけではありません。あくまで、急性の肺動脈塞栓症を治療する手術です。その手術が成功し、犬が完全に回復したところ(通常術後10日〜14日)で、駆虫薬を使って残った成虫を駆除してました。
手術の成功率は、その犬の年齢や寄生数、急性症状が起こってからの時間経過、によります。統計をとったわけではありませんが、手術を受ける飼い主さんには、手術中に亡くなる可能性50%、手術が成功しても、そのうちの半分が、詰まっていた間に起こった循環不全にともなう多臓器不全でなくなる可能性があります。と説明していました。しかし、肺動脈塞栓症を放置すれば、ほぼ数日中に亡くなります。少なくとも私が勤務していた病院では「つり出し手術」そういう状況での緊急手術でした。
お話のわんちゃんのケースでは、私でしたら手術はしません、というか「つり出し手術」をしても摘出できる虫はそう多くないと思います。また駆虫薬も犬の年齢や症状と薬の毒性を考えると危険性が高いです。心臓を助ける薬(利尿薬・血管拡張薬)を与えて、フィラリアの予防を確実に行うことを選択します。「つり出し手術」以外のフィラリア症の手術については経験がありません。

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