獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200508-174

re:悩んでいます
投稿日 2005年8月19日(金)11時49分 投稿者 プロキオン

これは、どうも雲をつかむようなお話ですね。sutemaru先生の
おっしゃられているとおりだと思います。

ウイルスと言う生命は、そう簡単には異なる動物の間を行き来できない
のが普通なのです。
手当りしだいに感染してしまうウイルスは症状が重篤となりがちであっ
て、これではウイルス自身も世代を重ねる事ができずに死滅してしまい
ます。
他の種類の動物に感染する能力を有するようになるのには、それだけの
進化の時間を必要とするのです。

また、その性質故に、ウイルスを分離しようとするのであれば、人間で
あれば人間か猿の細胞を分離用に必要とします。
犬のウイルスには、犬の細胞、鶏であれば鶏の細胞叉は発育鶏卵を必要
とします。ウイルスを継代したり、増殖しようとするにも、手軽に増や
すことが可能な細胞がないとできません。
人間のインフルエンザのワクチンも、鶏の細胞に安定的な感染させるこ
とができるようになったからこそ、量産できるようになったのです。

話が広がり過ぎないうちに元にもどしますと、なんだか分からない相手
を対象としての分離用の培地(細胞)は存在していません。
◯◯のウイルスを分離するためには、それに応じた細胞を用意しなくて
はならないのです。肝心の◯◯が判明していなければ、いくら大学病院
とて、分離を試みようとは思わないでしょう。
また、ウイルスを分離するには、細胞の問題だけでなく、分離可能な適
期があります。この時期を逸していれば、ウイルスの正体が判明してい
ても分離はできません。

従いまして、ウイルス疾病では、通常、病原体の分離よりも、感染した
ことの証明である「抗体」の検出が試みられるのです。
ただ、こちらの抗体検査においても、ウイルスと抗体は、「鍵と鍵穴」
の関係にありますから、被験者の血清と既知のウイルスのすべてを検査
にかけて反応を確認しなくてはなりません。
これには、とてつもない労力が必要ですから、現在のnanaさんの健
康状態から判断されて、「検査する必要はない、検査するまでもない」
という意味での返答ではなかったでしょうか。

# 普通には、臨床症状や死亡率から、想定可能な疾病をいくつかあげ
  て、それらの抗体を検査しています。
  したがって、症状を欠いていれば、予想すべき疾病リストも作成で
  きないということになります。


そもそもは、最初に「動物のウイルスに感染している」と発言された病
院の先生の発言が不適切なように思います。
そのように発言するからには、動物の種類と予想されるウイルスの名称
について、説明するべきでしょう。それがないから、患者も大学病院も
振り回されているということになります。どのような根拠で、その発言
に繋がったのかを確認するべきでしょう。
根拠を示すことができないようなお話であれば、気にされる必要はあり
ません。

ここからは、私の想像ですが、猫を飼育しているということで、「トキ
ソプラズマ」を念頭においていたのではないでしょうか?
それが、なぜか、ウイルスという風に伝わってしまったというか?
トキソプラズマはウイルスではなく、原虫です。猫を飼育していると聞
くと、医師の中には必要以上に気にされる方が多いようで、比較的あり
がちなことのようですよ。

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