獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200603-11

レス、2題
投稿日 2006年3月1日(水)19時19分 投稿者 プロキオン

3月1日の みちさんへ
すでにけりーずはうす先生よりレスがついておりますが、一般論としては先生のお
っしゃるとおりだと思います。普通は関係ないと考えるべきでしょう。
ただ、私の場合、避妊手術後の出血を経験したことがありますので、これについて
触れておきます。
患者は、私の住んでいたアパートの先住者である雌猫でして、この猫のは腰椎の数
が通常より1個少ない個体で、難産の傾向がありました。
その猫があるときの分娩で、まる1日以上経過しても赤ちゃんが生まれてこないと
いうことで、友人の病院へ連れて行って、赤ちゃんごと子宮を摘出しました。この
とき、手術後の排尿に血液が混じるという現象がありました。本来であれば、帝王
切開をするような状態の子宮を切除したので、切除されずに残っている部分の粘膜
からの漏出性の出血だったのではないかと友人との話ではなりました。
# 余談ですが、このときには執刀したのは私ですが、手術室を使用させても貰っ
  て1晩入院させてもらったので、しっかりと手術代金は払ってきました。

子宮や卵巣は腹腔内の器官ですので、きちんと子宮の切断面が処理されていれば、
尿の中に腹腔内の出血が混じるということはありません。
発情のどの時期に手術を実施したのかは、検討してもよいかもしれませんが、もし
発情とまったく関係のない時期であれば、膀胱や尿道由来と考えた方がよいのでは
ないかと思います。



3月1日の ふーちゃんへ
通常、抗体の検査は倍、倍と被検血清を希釈していって、最終反応が見られた希釈倍
数を抗体価と判定します。
X2、X4、X8、X16、X32、X64と言う具合です。
最初の抗体価がX100ということは、100倍希釈の血清から検査がスタートして
いるということになるのだと思います。1ヵ月後の検査値がX200ということは、
検査に供している検査プレート上での動きは1管(1つ)の動きでしかありません。
抗体検査においては、1管の動きは2単位の動きであって、有意な上昇とは判定され
ません。誤差の入り込む余地があるからです。有意と判断されるためには、4単位以
上の上昇を必要とします。
今回の検査と前の検査との間に1ヶ月の期間がありながら、この程度の動きであれば
ウイルスの動きはないと考えるのが妥当なところではないでしょうか。
普通、ある特定のウイルスの感染があったか否か調べるためには2週間の間隔をおい
て前後でペアとなる血清を採取して、抗体価が上昇しているかを調べます。感染があ
れば、もっと大きな範囲で抗体価の動きが確認できるのが普通です。
そうでないとウイルスを駆逐できないので、その動物は死んでしまうことになりかね
ません。
例をあげると、トキソプラズマ病などでは、例え抗体を保有していても判定基準は
64倍以上でないと陽性とは判定されないはずです。
X2から検査がスタートして、検査プレート上の反応としての+−はあっても、疾
病としての判定は、6菅目以上の確実のものをもってするということになります。

猫のコロナウイルスでも、100倍や200倍の抗体価であれば、数字だけであって
「陽性」の判定にはならなかったのではないでしょうか。
猫のコロナウイルスは、必ずしも数値ではなく(高くても低くても)、今現在の猫の
状況を診ながらということが必要な病気ということになっています。
この程度の数値であれば、私は有意なものとは受け取りません。

また、インターフェロン云々についてですが、猫伝染性腹膜炎はインターフェロンの
効果が期待できない病気ということになっていたはずです。
昨今、インターフェロンとデキサメサゾンの同時投与を勧める意見もありますが、こ
れは私には効果の程は分かりません。実施したことがありませんので。
 ( 私の周辺では、もう何年も出会っていない病気なので、効果を確認したくても
   できないのです )
この場合の作用というのは、ウイルスに対しての効果ではなく、免疫抑制を狙っての
ことではないかと受け取っています。猫伝染性腹膜炎における異常な免疫状態を抑え
るということが目的なのだと思われます。
ということであれば、この病気を発病していない状態での適応は、効果があるとは言
いきれないのではないでしょうか。
この病気のもととなっているウイルスも、子猫に下痢を引き起こすウイルスも、どち
らもコロナウイルスではありますが、まったく何もかも同じウイルスではないと説明
を受けていると思います。概念上は分けて考えられておいた方が理解しやすいように
思います。
抗体検査結果に振り回されない方がよろしいかと思います。

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