獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200611-5

Re:Re:犬の義眼について プロキオン様
投稿日 2006年11月1日(水)11時45分 投稿者 プロキオン

緑内障のコントロールというのは、その大部分が眼圧のコントロールと言い換えてもよ
いかと考えています。
すなわち、今もまだ眼球の腫大が進行しているのであれば、コントロールできていると
は言いかねるのではないかと思うのです。このあたりのことが気にかかっていたので、
シリコンボールがあれば、外観上普通の犬と同じでいられるという安心が、もしかして
期待はずれになるかもしれないのを危惧したということになります。

眼圧をコントロールするには、原因となっているブドウ膜の炎症を抑制することもあり
ますし、眼圧を下げる内服薬、あるいは、もっと進んで眼房水を産生している組織の破
壊というような処置があります。
眼房水を産生している組織の破壊というのは、加減が難しく、逆に「眼球労」という眼
球の萎縮を招くこともあります。シリコンボールを入れるというのは、こちらへの対処
という側面もあります。方法としては、化学薬品によるものとか、温熱を利用してとい
う手法もあります。
このような処置が功を奏したのであれば、眼球の温存が可能であったり、シリコンボー
ルによる美容整形が摘要と考えられます。
しかし、効果が得られなかった場合というのは、眼圧の上昇した眼球が破裂することを
防ぐために眼球の全摘出という選択肢しかとりえないことが出てくるわけなのです。
眼球が摘出された場合というのは、眼窩にぽっかりと空洞があいてしまい、著しく外観
を損ねることとなりますので、シリコンボールを眼窩に入れて眼瞼を閉鎖するというこ
とになります。そのまま閉鎖してもよいのですが、眼瞼が落ち窪んだような状態になる
ので、眼窩に中身があった方がよいということなのです。
そして、眼球摘出後に義眼を入れるというのは、何もない状態での補正と言えるのです
が、この義眼は球体ではなく湾曲した平板のような形で、眼窩の奥の方の組織を利用し
てその上にに設置するような形になります。この義眼自体は、人間の場合と同じで個体
の眼窩の大きさだけでなく、年齢的な色彩の変化も加味して作成されます。
すなわち獣医師だけの仕事ではなく、技工士さんの力も借りなくてはなりません。した
がいまして、料金の目安はあるのでしょうが、かなり幅のある料金とならざるをえない
ように思います。
このような症例を多く手がけている病院であれば、料金についてもある程度の目安はわ
かるのでしょうが、そうでない病院にとっては飼い主さん同様に見当もつかないという
ことになります。
もとより、診療費というものが統一してはいけないという指導があったわけで、同じ治
療を実施しても診療費は病院によって異なります。手術を受ける病院の料金として尋ね
るしかないことになります。おそらく、ここを最も知りたいのではないかと想像します
が、かような理由があって、私にも答えようがありません。



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