獣医師広報板ニュース

ペットロス(メモリアル ルーム)掲示板過去発言No.0100-200412-8

ありがとう
投稿日 2004年5月3日(月)23時45分 投稿者 mameco




桜が散ったある日の夜明け
ブウちゃんはたった一人で虹の橋へ向かいました。
リビングの隅で眠るように。

ブウちゃんに始めて会ったのは
14年前 木立が青々とした頃のことでした。

柴犬で女の子
兄弟の中でも いちばん小さくて
身体の弱かったブウちゃん、
それでも瞳を輝かせて私を見てたよね。
犬を飼うのは大反対だったお父さんもお母さんも
ブウちゃんが余りにもかわいかったから
その日のうちに家族になったよね。

家まで抱っこして連れて帰ったけど
ちいちゃくって
温かくって
ミルクの匂いがした。
幸せの匂いがしたよ。

ブウちゃんの本当の名前はセーラ。
元々はレーラ。
ブウちゃんが家族になった この日のご飯が
カレーライスだったから。
だけどレーラは言いづらいからと
セーラになったんだよね。

子犬の頃のブウちゃんは
すぐにお腹を壊したから
食べるものには気をつけていたのに
ブウちゃんボケしたお父さんったら
人間の食べものをわざと
テーブルから落としたりするから
私とお父さん、よくケンカをしちゃったね。
お父さんは
“ブウちゃんだって美味しい物を食べたいよ”
って言ってたけど
私はブウちゃんが身体を壊すのが怖くって
こればっかりは譲れなかったよ。
そんな時、ブウちゃんは
私の足元で瞳をウルウルさせて私を見上げてたよね。
あれは“ケンカを止めて”って言ってたんだよね?
もしかして“パパの言うとおりだよ”って言ってた?

ブウちゃん、
小鳥が大好きで
公園で小鳥たちと追いかけっこしたよね。
だけど一度も捕まえられなかったね。
ブウちゃんはポッチャリしてたから
きっと地響きでバレてたね。

ブウちゃん、
たくさん遊んだね。
ボールが大好きだったね。
引っ張り合いっこも大好きだった。
あと隠れんぼ。
私が隠れてるところなんて
ブウちゃんにはバレバレなのに
私に合わせて見つけにきてくれたね。

私が泣いていると
ブウちゃん、いつも慰めてくれたね。
心配そうに見つめて
顔をペロペロなめてくれたね。
くすぐったくて思わず
泣くのを止めて笑ったよね。
二人で笑ったね。

ブウちゃんはガムとかチョウダイとか
私たちの言葉を真似することができたよね。
本当にビックリするくらい
ちゃんと喋れることがあったけど
友達に言っても信じてもらえなかったよね。
本当に喋れたのにね。

いつか、散歩に行った帰り
首輪が抜けて大きな道路に飛び出して行った事があったね。
トラックが急ブレーキをかけて
私は思わず目を瞑ったの。
とっても長く目を閉じていた気がしたけど
5秒くらいだったかな。
少しずつ開けるとブウちゃんはそこにはいなくて
急いで家まで帰ったよ。
家までの道のり、あんなに長く感じたことは
後にも先にもあれっきり。
すごく心配した。
だけどさすがブウちゃん、玄関の前で待ってたね。
私を見つけて尻尾がちぎれるくらい振ってたね。
私は、ほっとして嬉しかったけど
キツクしかっちゃったね。
もう離れちゃだめだって。
そして次の日から首輪を少しキツクされちゃったね。

お留守番が大嫌いだったブウちゃん、
一人ぼっちになると
キューン、キューンって
いつまでも悲しい声で鳴いてたね。
帰ってきて最後のの角を曲がると
ブウちゃんはすぐに気づいて
玄関まで迎えに来てくれたよね。

ブウちゃんは私のベッドが大好きだったね。
いつも一緒に寝ていたね。
寝相の悪い私の足を避けるのは
大変だったんじゃない?

夜はブウちゃんが出入りするから
私の部屋はいつもドアが半開き。
お年頃の私だけど
ブウちゃんのためなら仕方ない。
夜中に酔っ払ったお兄ちゃんが
ブウちゃんに会いに部屋に入ってくるのも仕方ない。
かわいいブウちゃんに会いたくなる気持ち
よく分かるから。

私が一人暮らしをする事になって
家を出て行くときのブウちゃんの瞳
今でも忘れられないよ。
心配そうに寂しそうに
だけど優しい目をして
いつまでも見送ってくれたね。

年をとってブウちゃんは
目が見えなくなってきたね。
足も弱くなって耳も聞こえなくなってしまったよね。
いつも下を向いて匂いだけで歩いていたね。
大好きだったお庭も
ブウちゃん一人では下りられなくなっちゃったね。

最期の半年は
ご飯もなかなか食べてくれなくなっちゃったね。
大好きなチーズもたくさん食べられなくなちゃったね。
お水も一口飲むのがやっとのことだったね。
どんどん痩せてしまったね。

それでも私が帰るとブウちゃん
ぶつかりそうになりながらも
一生懸命玄関まで迎えにきてくれたね。

ブウちゃん、
動物は最期の時に今生の出来事が
走馬灯の様に廻るって言うけど
最期に見た夢はどんな夢だった?
青い芝生で小鳥と追いかけっこしたり
自転車のカゴに乗ってお出かけしたり
美味しいオヤツを食べたりして
楽しい夢だった?
寂しがりやなブウちゃんだから
寂しい夢を見なかったか心配だよ。

ブウちゃん
もっともっと一緒にいたかったね。
もっともっとしてあげられる事があったね。
こんなに早くお別れが来るなんて
思ってもみなかったよ、ブウちゃん。

でもブウちゃん
もう元気に走れるね。
もう大嫌いな注射もしなくていいし
もう身体も痛くない。

ブウちゃん
もう虹の橋に着いたかな?
迷わなかったかな?
お友達はたくさんいるかな?
一緒に天国に行ける日まで
そこで待っててね。
虹の橋、一緒に渡ろう。

お庭に隠したブウちゃんの宝物
いつかきっと出てくるね。
何が出てくるのか楽しみだよ。
たとえそれが私のなくなった靴下でも
もう怒らないよ。
ブウちゃんの宝もの、
今度は私の宝物にする。


ブウちゃん、
生まれてきてくれてありがとう。
家族になってくれてありがとう。
たくさんの思い出ありがとう。
優しさをありがとう。

たくさん、たくさん
心からありがとう。

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