獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-199812-20

フィラリア治療
投稿日 1998年12月26日(土)04時59分 パールちゃん

台風で被災したあと我が家の犬になったダイちゃんの
ミクロフィラリア治療について報告します。
(雑種、オス、5歳くらい、体重約12キロ)

12月6日の朝・晩、7日の朝、体内の細胞を安定させるために
ブレドニン(ステロイド剤)を飲ませた。

12月7日の夕方、散歩。このあと2週間は散歩禁止になるので
ゆっくりと時間をかけて散歩させた。
散歩後1時間たってから、おやつのプリン(砂糖抜きのお手製)に混ぜて、
ミクロフィラリアを殺す薬を飲ませた。
この薬は無味無臭で透明の液体。成分は砒素だという。
ほんの数tのこの液体がもしかしたらダイちゃんの命を奪うことになるかもしれないと思うと手が震えた。
いつもは一気に食べるプリンなのに、途中でやめようとした。
心を鬼にしてなだめすかし、全部食べさせた。

この薬によって血液内にいるミクロフィラリアを殺すわけだが、
薬とはいえ砒素という毒物なので、体質と体力によっては薬に負けて命を落とすこともあるという。
丸2ヶ月間迷った末に、以前フィラリアで苦しんだ犬がいた経験を思いだし投薬を決意した。
迷っている間の2ヶ月間にダイちゃんにはスペシャル御飯を食べさせ、
運動も充分にさせ、体力を増強する日課を行った。

薬の作用は投薬後30分くらいから効き始め、作用のピークは
4〜5時間後くらいにあらわれるという。
ダイちゃんは投薬後2時間目にかなりの貧血症状があらわれ、
歯茎が白っぽくなった。(もともとがフィラリアのせいで貧血気味だったが)
見た目の様子はいつもと変わらないので庭に5分ほど放しておしっこをさせた。
そして、ふだんの半分の量の食事。いつも通りぺロリとたいらげた。
食事後は安静にさせるために、人間は顔を出さないようにした。
(ダイちゃんは今までは外飼いの犬だったが、安静にさせるためと、
夜間の冷え込みで弱らせないために屋内のガレージに入れた)
こっそり見てみると、ずっと眠っている。
ちゃんと息をしているかどうか心配で、数時間ずっとダイちゃんの寝姿を見ていた。

投薬後10時間目。目覚めたようなので様子を見に顔を出してみた。
歯茎はかなり白かった。
ふらつくという感じではないが足取りが少しいつもと違った。
しきりに口をクチャクチャさせた。
のどに何か詰まったようなケホッという咳を何回かした。
目つきがトローンといて焦点が定まらない感じ。
それでもしっぽを振って甘えてきた。
細胞安定のためのステロイド剤を混ぜて、ほんの少しの暖めた牛乳を飲ませた。
口や舌がしびれているのかうまく飲めなかった。
やっと飲んだと思ったら、すぐに全部吐いてしまった。
なるべく休ませたほうがいいと思い、そばについているのはやめた。
そのあとはずっと、窓からこっそりとガレージのダイちゃんを見守って朝を迎えた。

12月8日、朝。
昨夜のげっそりとした感じはすっかりなくなり、元気いっぱい。
急に運動をさせると死んだミクロフィラリアが血管に詰まったりして緊急事態が起こることもあるので、
おしっこは庭でさせずにガレージ内でさせた。
プリンとカステラと牛赤身肉のゆでたものを少しずつ食べさせて、
同時にステロイド剤も飲ませた。
吐かなかった。
口をクチャクチャさせるのも、ケホッの咳も止まった。
ひとまず安心。

夕方、庭に出して5分だけおしっこタイム。
走らないでほしいのに、人の心配をよそに走り回っていた。
夜の食事も通常の半分の量で様子を見た。
ダイちゃんはこれまで缶フードにドライフードを混ぜたものをいつも食べていた。
投薬後は慣れているもののほうが食欲が湧くと思い同じものを量を減らして食べさせたが、
明日からは貧血改善スペシャルメニューに変更。

12月9日。さらに回復し、庭に出すと走り回って元気いっぱい。
だが用心のために庭に出すのは1回15分まで。
だいたい5〜6時間おきにおしっこタイムにした。
投薬後ずっと、おなかもこわさずにいいウンチ。
この日から牛赤身肉のゆでたものに、そのスープを煮詰めてエキスにして一度冷やし、上に浮いた脂を除いたものをかけた食事に変更。
薬の副作用として肝機能障害が出る場合があるらしいので、
肝臓に負担をかけないために脂肪分はなるべく排除した。
これでおなかをこわさなければ、しばらく続ける予定。

投薬後5日目までで細胞安定のためのステロイド剤を終了。
これ以上ステロイドを続けると今度はその副作用が心配になるという。
ダイちゃんはずっと元気。
ガレージに閉じこめているのに少し退屈してきたようなので、
昼間の暖かい時間帯は戸を開け放してリードにつないでおくようにした。
もともとおとなしい子なので、退屈しても鳴き続けたりしないので助かった。

12月19日、投薬後12日目。
元気いっぱいなので、今まで暮らしていた外の犬小屋のところに2時間だけつないだ。
古巣にもどって嬉しそう。
夕方寒くなってきたのでガレージに戻すと、それはそれで嬉しそう。
手のかからない子だ。

12月21日、投薬後丸2週間。
この2週間経過というのがひとつの目安になるらしい。
ミクロフィラリアを殺す薬自体に負けて、犬の身体に緊急事態が起こることはもう心配ないという。
死んだミクロフィラリアはじょじょに吸収されて排泄されていくらしいが、
まだそれには投薬後1ヶ月間くらいの期間を考慮したほうがいいとのこと。
2週間という山は乗り越えたが、まだあと2週間は用心しなければならない。
山を乗り越えたことで、ひと安心。
安静期から少しずつ体力回復の時期に移ったということだ。
この日、2週間ぶりに外へ10分間だけ散歩に出た。
これまで首輪にリードだったのを、それでは引っ張ったときに苦しいだろうと思い、胴輪を購入した。
ダイちゃんは久々の散歩に大喜び。
グイグイ引っ張ろうとするが、それまで首で引っ張っていたのが今度は胸で引っ張らなくてはならないのに戸惑い、
おかげで無理に引っ張る過激な散歩にならなくてよかった。


投薬後はずっと、庭に出す時には歯ぐきで貧血チェックをしたあとに出していた。
貧血気味なのは続いているが、歯ぐきが真っ白というひどい貧血ではなかった。

12月22日。
かなり長い時間、外の犬小屋のところにつないでおいた。
お昼におやつのプリンを食べさせたあと、しばらく家の用事をし、
夕方の散歩の時間になった。
いつもなら小さく吠えて催促してくるダイちゃんがこの日は吠えなかった。
おとなしいなぁと見にいくと、食べたプリンを吐いたあとがあり、少し貧血がひどかった。
耳をさわってみると熱っぽかった。
午後になって風が冷たくなってきたのに気がつかず、
外につなぎっ放しだったので風邪を引いたようだ。
散歩は中止。
ガレージに戻しておとなしくさせ、消化のいい食事を少しだけ食べさせた。
その夜はなるべく安静にさせた。

12月23日。
まだ少し熱っぽいが元気は回復した。
用心のため、この日も散歩は中止。

12月24日。
熱は下がり、元気いっぱい。
だが念のため、この日も散歩は中止。
クリスマスなので、お菓子の入っていたサンタさんの靴をおもちゃとしてプレゼントすると、
しばらくそれを相手に遊んでいた。

12月25日。
風もなく暖かかったので散歩再開。15分間ほど。
思う存分におしっこをかけまくり、よその犬の通った匂いをかぎ、
いきいきとした以前のままのダイちゃんだった。

もう少し退屈な毎日に我慢してくれたら、また思い切り走ったり、長い時間散歩したりできるようになるよ。
がんばろうね。

ーーーーーー
と、ここまでがダイちゃんのフィラリア治療報告第1話です。
フィラリアに罹患した犬の飼い主の方にとって、少しでも参考になればと思って書きました。
ただし、すべての犬がこの方法を取れるとは限りません。
その子の症状、体質、体力、気質によっては危険な治療です。
ダイちゃんは治療の最初の山を越えました。
これはダイちゃん自身の力であり、治療に際して納得のいく説明と方法を取ってくださった獣医さんのおかげです。
これからもダイちゃんには山が待っています。
なるべくなら、その山が低い山で、ダイちゃんの持ち前の体力と無邪気さで楽に乗り越えてくれることを、
飼い主として願っています。
今後のことはまた第2話として報告します。

◆獣医師広報板サポーター◆
獣医師広報板は多くのサポーターによって支えられています。
以下のバナーはサポーターの皆さんのもので、口数に応じてランダムに表示されています。

サポーター:新日本カレンダー株式会社ペピイ事業部様のリンクバナー

サポーター:ペットコミュニケーションズ株式会社様のリンクバナー

サポーター:ペット用品通販Gズ\ィエ.COM有のリンクグオー

サポーター:日本ベェツ・グループ 三鷹獣医科グループ&新座獣医科グループ 小宮山典寛様のリンクバナー

あなたも獣医師広報板のサポーターになりませんか。
詳しくはサポーター募集をご覧ください。

◆獣医師広報板メニュー
獣医師広報板は、町の犬猫病院の獣医師(主宰者)が「獣医師に広報する」「獣医師が広報する」
ことを主たる目的として1997年に開設したウェブサイトです。(履歴)
サポーター広告主の方々から資金応援を受け(決算報告)、趣旨に賛同する人たちがボランティア
スタッフとなって運営に参加し(スタッフ名簿)、動物に関わる皆さんに利用され(ページビュー統計)
多くの人々に支えられています。

獣医師広報板へのリンクサポーター募集ボランティアスタッフ募集プライバシーポリシー

獣医師広報板の最新更新情報をTwitterでお知らせしております。

Copyright(C) 1997-2024 獣医師広報板(R) ALL Rights Reserved
許可なく転載を禁じます。
「獣医師広報板」は商標登録(4476083号)されています。