獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-200307-104

アイコンタクト補足
投稿日 2003年7月22日(火)03時00分 はたの

パールちゃんから適切なレスがありますが、ちと違う角度から補足。

 アイコンタクトは、目的ではなく手段です。
 最終到達点ではなく、中間過程です。というか、初歩です。
 
 肝心なのは意志の疎通であって、意志の疎通ができているのなら、アイコンタクトはなくてもいいのです。バスケットやサッカーを思ってください。アイコンタクトのパスもありますが、より高度なものとしてノールックパスがありますよね。やるべきことのイメージが共有できていればアイコンタクトは要らないのですし、使うとしても、目が一瞬合うか合わないかといった程度でよいわけです。目以外にも、お互いの姿勢や動きなどでもいいわけです。

 なぜこんなことを書くかといいますと、アイコンタクトを「習得すべき課目」として捉えるとしばしばやりすぎになり、パールちゃんの書かれているような弊害が出やすくなるからです。そもそも、特別な難物や、犬舎に入れっぱなし鎖に繋ぎっぱなしでないイヌの場合、アイコンタクトは出来ていることが多いものなのです。出来ていることの確認程度で十分な場合が多い、改めてやらなくてもいい、というわけです。

 脚側行進、プロの場合、「自分のイヌ」ではない、人に見せる時に外すわけにいかない、などあってアイコンタクトが強くなりがちということも考えられます。普通の飼い主の場合には、うまく出来ている場合と出来ていない場合の両方があるでしょうけれど。
 ハンドラーがイヌに注意を払わなくてもイヌがきちんとついてくるのが脚側行進のあるべき姿ですから、しっかりしたアイコンタクトのある脚側行進は、完成形ではないということです。本来の訓練はイヌを使役するためであり、訓練のための訓練ではありません。ハンドラーは、たとえば猟犬であれば獲物を、牧羊犬であれば羊を見たいわけで、黙っててもイヌについてきて欲しいのです。イヌもまた、ハンドラーの視線を探すようでは未熟で、獲物なり羊なりに注目しながら指示を待つべきなのです。アイコンタクトの成立のしようがありませんよね。

 こうした観点からいえば、クリッカートレーニングも、過程として捉えるほうがよいと思われます。声やしぐさだとシグナルとして不安定であるというハンドラーの未熟を補うためにはよいものですし、複数のハンドラー間でシグナルを統一しやすいという利点もあります。ですが、特定のトレーニングタイムが決まっている(イルカなんかはそうですね)なら差し支えありませんし、物理的に必要な場合(牧羊犬や猟犬の笛)もしかたありませんが、生活を共にしている場合、道具は少ないほうがラクです。クリッカーが入りすぎると、クリッカーが手元にない時に困ります。イヌが生きている限り、寝てる時も入浴時も常に携帯し続けるのは大変です。
 つまるところ、イヌがシグナルに混乱してトレーニングが滞っているのでなければ、家庭犬に敢えてクリッカーを使う必要はあまりないのです。幸い、イヌの身体言語はヒトのそれと共通点が多いのですし、イヌには、同じ意味を持つ複数のシグナルを受け止め得る性質が備わっていますから。

 アイコンタクトにせよクリッカーにせよ、あまりしゃかりきにならず、教科書どおりを目指されず、ゆったりした気分で行われることをお勧めします。

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