獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-200307-111

re:Re:アイコンタクト補足
投稿日 2003年7月22日(火)15時07分 はたの


 なるほど。私個人の好みとは異なりますが、そういう目的でしたら、やるべきことの理屈はハッキリしてきます。実行が簡単かは別として。また、細かな方法論はいろいろ有り得ますが。

 もし私がゼロから、そういうデモドッグを作るとしたら。
 そこそこ頭がよく、長時間ECで威圧はされるけれど萎縮しない程度にタフで鈍感で食い意地の張った犬種にします。つまり「訓練性能がいい」ものに。
 かつ、犬舎で飼い、ヒトの接触自体が「当たり前のこと」ではない、特別嬉しいこと、にします。遮断化の手続きです。食餌はドライのみ、おやつは訓練時のみ使用。

 ここはいまさら変えられないでしょうが、近づけます。訓練時間をハッキリ区別する(散歩時の脚側行進と訓練時のそれとは別物とする。散歩時にはECアリ脚側行進は一切やらせない)、威圧とフォローのバランスにより注意を払う、といったように。

 で、まず威圧的なECを作ります。これはパールちゃんが書いておられる、イヌの生得的な性質上でのECの意味からして、威圧的なほうが自然だからです。
 次いで、「やめてヨシ」をECに乗せます。
 命令的EC、保持のEC(ここまで威圧的)、解除のEC、おやつ、という流れです。
 と、解除のECがおやつのブリッジ(前もって提示される「橋渡し刺激」にして、おやつと連合した高次強化子)になります。その後、自然に、保持のECが解除のECを通して次のブリッジになります。
 この時点で、ずっと目を合わせていても萎縮したように見えない、状態が作れます。
 次に、脚側行進終了時におやつを与えることをランダムに減らしていきます。最後にまとめて、としていくわけです。と、VR(可変割合)強化スケジュールとなり、ECしつつの脚側行進という行動はより強化されます。
 やや遅れて、おやつを出す右手に注目したり反応したりする行動はゆっくりと消去されていきます。途中でこの行動の頻度が上がりますが、ガマンのしどころ。

 巻きつくようにしたければ、対面停座を作り、その合図にヒトの左膝「も」使います。イヌには早く前へ回って座りたい、そうすれば強化子がくる、と思わせ、それに対して、普通に歩く左膝で「まだまだ」のシグナルを出すわけです。左膝だけで対面しちゃわないように、イヌが先回りしないようにバランスをとってしばらく続け、他方で対面停座をやらなくすれば、対面停座は消去され、が、巻きつく行動はVR強化で残ります。あるいは右手でおやつやっていれば意図しなくても巻きつく傾向は出がちで、その程度で足りるかもしれません。

 こうなれば、ハンドラーの目を一心に見つめながら絡むように歩く脚側行進という行動がシェイピングできたことになります。
 むろん、実際には、一連の行動の各要素がどうなるかそのイヌを見ながら調整していくわけで、特に、「いずれ消去する」行動は入れなくてすむのなら軽めにしておくほうがラクといったアヤはありますが・・・。

 で、プロにもアマにもいろいろなかたがおられましょうが、一般論として何が違うかといえば、プロのほうが強いプレスをかけている、ということになります。そのかわり、タフなイヌを選んだり、接触時間を少なくすることで接触時にはイヌを高揚させる、あるいはプレスがかかり続けないようにする、同じ強化子のイヌにとっての価値を大にしてやる、などの手練手管で、訓練をスムーズにすすめ、かつ、萎縮しないようにしていくわけです。訓練がスムーズに進めば、プレスは弱められますし、同じプレスをヒトが発していてもイヌは割り引いて受け取るようになりますから。(だからこそ、いわゆる西欧風の家庭犬訓練系の訓練方法だと、プレスへの感度が高いイヌは難しいといわれ、別の方法論がとられるわけです。柴犬を猟犬にする一方法として、何も教えるな、ただかわいがって育てて山へ連れて行け、があるなど)。

 他人のイヌに初めて脚側行進を教えると、ハンドラーがプロでなくてもECとりっぱなしになりがちです。機会がおありでしたら、よそさまのイヌにゼロから脚側行進を教えてごらんなるとよろしいかと。ごく自然に、ECとりっぱなし、巻きつくような、になりがちです。でなきゃ出来ないか。
 それもつまりは飼い主以上のプレスがかかっているからです。子供にとっての親と(なじみのない、それも武道かなんかの)先生との違いみたいなものです。逆にいえば、なじみがないからそうならざるを得ないし、プロ(というか、他人のイヌを)にとってはリラックスして歩くように仕立てるほうが困難、ということでもあります。これは同時に、自分のイヌに緊張感を保たせるのがやや難しいことの裏返しですね。

 こうして見ると、目指しておられる目的にクリッカーはあまり適しません。携帯の面倒ばかりでなく、クリッカーは瞬間を指し示すものであり、行動の継続を示すには向かないからです。また、解除を意味するブリッジとして使うにしても、いずれクリッカーなしにするのであれば、連合させて消去して、と二度手間です。それよりは複数のECの使い分けのほうがよろしいかと。・・・審査員に判りづらく、イヌに判りやすく、顔で出せる合図であれば「アイ」コンタクトでなくてもいいんですが。

 これなら少しはご参考になりましたでしょうか。

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