パールちゃんマリンさんの実験にあるように、ＥＣが担い得るメッセージはひとつではない、わけです。
　なので、意図的に、ＥＣを単に威圧に使うだけでなくして、「よくできているよ、そのまま続けて」「よくできました、いままでやっていたことをやめていいよ」というＥＣによるお約束を付け加えるのがいいでしょう、ということです。
　というか、これはＥＣに限りません。
　「スワレ」のような１動作を生じさせる命令はまあそれだけのものですが、脚側行進のように継続する行動を指示する場合、「開始」「いいよ、そのまま／おい違うぞちゃんとやれ」「ＯＫやめてよし」の最低３つの指示が要るわけです。後二者、たとえば、低い声でのgood boy/good girl、ＯＫ！、のように使い分けますでしょ。同じことをＥＣでやれば、ＥＣに威圧以外の意味が生じるので、目を合わせ続けていてもイヌが萎縮しなくなる、ということなんです。

　巻きつくほう。これは、真横を歩くのと前へ回りこむのとの中間的な状態ですよね。つまり、真横を歩くのより不安定なんです。巻きつきながら歩くというそれ自体を直接教えるのは難しいので、真横を歩く、前へ回りこむ、のふたつの方向性の間に宙ぶらりんにぶら下がるように、真横系と回りこむ系との指示のバランスを取ってやろう、ということです。それを繰り返しているうちに不安定ながらも安定してくれる、わけです。
　サーカスのライオンやトラが後足立ちしますよね。あれも、座っている、また、伸び上がってトレーナーに飛びかかる、というふたつの行動の中間的なものです。矛盾するふたつのシグナルをバランスを取りながら発することによって、中間的な動作をさせ、その後、その中間的な動作を強化することで多少とも安定させる、が、本質的には安定しないから、一応の完成を見たあとも、少しブレたら当初のふたつのシグナルのバランスどりをする、というふうになっています。
　
　これで少し判りやすくなったといいのですが。