獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-200401-48

>浜松・鈴木さん
投稿日 2004年1月7日(水)12時20分 プロキオン

>輸入犬の検疫状況はどんなものなのでしょうか? 我が家のダックスはドイ
 ツから着た両親犬が日本で生んだ子なのですが、警察犬訓練所などがシェ
 パードを輸入するついでにダックスを連れてくるそうで、シェパードに問題
 がなければノーチェックとも聞きました。 本当なんでしょうか?

これは、私がお答えすべき内容ではないのですが、動物検疫所は国の行政機関
ですので、そんなノーチェックということはないのではないでしょうか。
犬には、2週間の検疫期間がありますので、それがノーパスということはない
でしょう。
牛であれば、ブルセラ病は法定伝染病ですから、輸入された牛は全て血液中の
ブルセラ抗体の検査を実施されているはずです。犬はブルセラ病の指定対象動
物には該当しませんので、なんらかの臨床的な徴候を呈していない限り、ブル
セラ抗体の検査を実施するということにはならないと思います。
この「なんらかの臨床的な徴候」が、ブルセラ病の場合、もっとも顕著なのが
流産死産なのですから、検疫がその期間にぶつかっていないとね。まして、感
染して時間が経過して慢性化していれば、発熱や嘔吐等の非特異的な症状の方
も消えていると思われます。それでも病原菌は生存しているんですから、検疫
の眼をくぐり抜けてしまう可能性はありますよ。雄犬であれば、なおのことと
言えます。

実際には、ノーチェックが問題となっているのは、北方からの漁業船舶です!
こちらは漁師が船に一緒に載せてくる犬達が検疫無しで、国内へ上陸いている
ようです。出航の際に犬達が回収されずに野良犬になってしまうケースもある
ように聞いており、漁港の近くの動物病院では不安に感じているようです。
特に狂犬病のように潜伏期間が長い疾病であれば、二次感染どころか三次感染
四次感染の患者から診察するケースも想定され、疫学的には相当な混乱がある
でしょう。

日本小動物獣医師会の会報(No.103)において、「仮想・狂犬病」というタイ
トルで、仮定の国から狂犬病ワクチン接種済みの輸入犬を原因とするシュミレ
ーションが掲載されています。
当初、ワクチン接種済みと検疫を受けていたので、当該犬が見のがされてきた
ということで感染を広げてしまい、多大な犠牲を出すという疫学的な混乱が想
定されています。
こちらによると、臨床獣医師や飼い主に死亡が出ており、多くの犬や猫が遺棄
も含めて犠牲になっています。終息宣言までに1年5ヶ月を必要としたことに
なっています。
このシュミレーションの重要な点は、ワクチン接種前にすでにウイルスの感染
を受けており、接種時に何の症状も見せずに臨床上健康であったという設定に
してある点です。
ワクチンと検疫をくぐり抜ける「感染症の侵入」というのが、現実におこりえ
ることであるので、本当に明日にでもありえることなのです。

このようにチェックしていても100%完全ではないのですから、ノーチェッ
クというのであれば、これは論外です。責任を問われなくてはなりませんね。



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