さっきスーパーに買い物に行ったら、駐車場の隅にシバ風のわんこがいました。
にこにこ笑ってしっぽを振るので近寄ってみたら、シバ風わんこはシルバーカーにリードを結ばれていました。
シルバーカーというのはお年寄りが買い物の際などに使う乳母車のようなものです。
「おじいちゃん待ってるの? おばあちゃん待ってるの?」と聞くと、
シバ風わんこはスーパーのほうを見ておすわりをしました。
「いい子だねぇ。お買い物が終わるまでちゃんと待ってるんだねぇ」と言うと、
ばっさばっさとしっぽを振ってにこにこ笑いました。
少しするとスーパーからおばあさんが出てきました。
「あれー、ユウ、相手してもらってたんか」
「いい子ですねー。ちゃんと待ってるなんて」
「犬は嫌いなんだけど、孫がこれを拾ってきてしもてなぁ」
「おばあちゃんのこと大好きみたいですねー」
「犬は嫌いなんだけど、孫がぜんぜん世話をしないもんでなぁ」
嫌い嫌いと言いながら、おばあさんは買ったばかりのパンの袋を開けながら
「これはパンが好きでなぁ。それも四角いパンよりこっちのほうが好きみたいでなぁ」と、
真四角の食パンよりちょっと値段が高い、バター風味の山型食パンをわんこにあげました。
わんこはもぐもぐパンを食べ、もっとちょうだいとおすわりしました。
「いかん。あとはおうちに帰ってからな。さ、帰ろう。寒くなってきたから風邪ひくよ」
贅沢でかなわん、注射に金がかかる、蚊の薬にも金がかかる、だから犬は嫌いさとひとしきりぼやいてから、
おばあさんは犬といっしょにゆっくりゆっくりシルバーカーを押して帰っていきました。
まだ何かぶつぶつ言っているのか、おばあさんの口が動くたびにわんこはおばあさんの顔を振り返って見ていました。
ユウくんとおばあさんはいいコンビです。