獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-200403-140

厳しい意見をあえて言います
投稿日 2004年3月31日(水)12時33分 投稿者 馬なり4ハロン

私は現在大型犬、世間では決して可愛いだの大人しいだのとはいわれないであろう品種を飼育しています。(連れて歩いていても「怖い」という声が聞こえる始末です。)なので、飼育開始からすぐに噛む力のコントロール方法を教え始めました。大型犬の子なので、多少苦労はしましたが「甘噛み」は比較的早くに収まりました。友人に公認訓練士がおりますが、この方も新しい子犬を迎え入れたその日から同じように「甘噛み」はいけない、とはっきり教えています。
誤解の無いように申し上げますが、私もその方も噛んで良いものはちゃんと与えています。ただ、「人間の体はおもちゃではない。噛んではいけない」としっかり教えるのです。別に暴力は使いません。
何故、こんなにこだわるのか?人間と比べて、日本では犬は法律的には非常に弱い立場にあるからです。万が一、人を噛んでしまった場合大変不利な立場にたたされるのです。こんな場合、動物愛護に関する法律は殆ど役に立ちません。(これは人に飛びついて転倒させても同様です)悪質な場合は「傷害罪」に問われます。裁判になってもまず勝てません。
私はかつては「犬の苦情担当(正式な名称ではありませんが)」でした。様々なケースを見聞してきました。そういう問題になるのは大型犬だろう、と思われるかもしれませんが、とんでもない。ヨーキーが足に噛みついた、と言う事で問題になったこともあります。ズボンの上から、しかも小型犬なので歯型がうっすら残るかどうか、と言う状態でしたが。
しかし、例えそれが「甘噛み」であっても、第三者にとっては脅威となりうるのです。もしも「事件」になったら、誰も貴方の犬を守ってくれません。自分の犬を守れるのは自分しかいないのです。当時、私はしみじみとそう思ったものでした。
現在はというと、「子犬だからまだふざけているだけ、まだそのままでいいんじゃないですか?いずれ直りますよね。」と言った飼主でその後きちんと矯正された方は非常に少ないです。成犬になれば自然と収まると思っているらしいのです。そして、残念ながら子犬の段階で「このこには人を噛むことはいけないと早く教えないと危険です。」と指摘した犬達は飼主が放置した場合、例外なく「すぐに切れて暴れて噛みつく」犬になっています。そのうち1頭は遊びに来た子供を噛んで血まみれにさせ、救急車を呼ぶほどの騒動になりました。当時まだ生後半年ぐらいだったと思います。(ただし飼主が真摯に忠告を受け止めて努力した場合は何とか大丈夫になっています。)
子犬のうちから今後、成犬になった時のことを考えている飼主ならば、こちらが黙っていても「甘噛み」はいけない、とすぐに教えます。そうやって子犬の頃から教えられたとても扱いやすいのです。少々嫌なことをされたからと言っても怒らず我慢してくれます。興奮が抑制されているというか、切れ難いというか。(だから病気の早期発見もしやすい)
子犬は噛むのが仕事という方がおられるようですが、では一体いつまでその状態を許すおつもりでしょうか?子犬ではなくなるまで?ですが犬の成長、特に大型犬は恐ろしく早く体が大きくなる事を知っていますか?(生後4ヶ月で体重20キロ、なんてのは珍しくありません。)それとも、うちは小型犬だからべつにいいや、ですか?さきほどの「子供に噛みついて救急車」の犬も小型犬です。犬の噛む力を侮ってはいけません。また、何をどの程度噛めば「甘噛み」ではなくて「本気噛み」とみなして犬に注意するのでしょうか?
人間は飼主さんとその家族だけではありません。一面識もない、その他大勢が圧倒的多数なのです。その方たちが「子犬だから」「甘噛みだから」と笑って許してくれる保証はどこにもありません。私も散々、その手のトラブルを担当させられましたからそのへんは骨身にしみています。
繰り返しますが、自分の犬を守れるのは自分、つまり飼主しかおりません。生かすも殺すも飼主次第。教えるならばさっさと早く、です。(自信がなくてトラブルが怖いなら、コントロールできるようになるまで他人に会わせない方が良いかもしれませんね。)
申し遅れましたが、私は今は臨床獣医師でもあり、大型犬のオーナーでもあります。我が犬は未だにやんちゃで暴れん坊(初心者向きの性格ではないと指摘されています)ではありますが、「人を噛んではいけない」「やたらと興奮して暴れてはいけない」としっかりわかっているようです。
非常に厳しい意見かと思いますが、犬を巡る現実はとても厳しいことをわかっていただきたいと思います。世の中は理解ある犬好きばかりではありません。犬が怖かったり、犬嫌いの方も多いのです。
私は人を噛んだトラブルが元で飼養放棄されて殺処分される犬をもう見たくありませんから。

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