獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-200501-80

仔犬を迎えようと思ったら
投稿日 2005年1月25日(火)04時38分 投稿者 パールちゃん

生後2ヶ月に満たない仔犬を買う人が最近とても多いような気がします。
生後1ヶ月、生後1ヶ月未満ということもありますね。
少し前はこんなに幼い仔犬を買う人はそう多くはなかったと思います。
室内小型愛玩犬がブームだからでしょうか。
小さくて幼いことが「より、かわいい」と思わせるのでしょうか。

人気犬種だからどんどん売れる、どんどん売れるから大量生産する、生産効率を上げるために仔犬は早めに母犬から引き離し母犬は次の生産に備えさせる、仔犬は離乳もしていないのに店のケースに入れられる、在庫が長引くと手間と経費がかかるから早く売ってしまいたい、幼く小さな仔犬は客の目を引き次々と売れていく、、、売れるから大量生産する、の繰り返し。
健康に育つ保証がないような幼すぎる仔犬がそうやって堂々と商品になっています。
そんな幼すぎる仔犬を売っているショップは良心的なショップとはいえません。
でも、買う人がいるから売る、それが現実です。

生まれた直後に母犬から引き離しても仔犬は死にはしません。
人が手を尽くして世話をし、哺乳したり下の世話をしたり温もりを与えれば仔犬はどうにか育ちます。
けれど、それでは仔犬自身が苦労するのです。体の成長においても心の成長においても。

仔犬が自然に離乳するのはだいたい生後1ヵ月半頃です。
それより前の生後1ヶ月くらいからドロドロ食なら食べられるようになりますから、無理に離乳させようと思えばこの頃に母犬から引き離してしまうことは可能です。
でも、適切な時期より前に無理矢理に離乳させられた仔犬はその後の食餌内容が悪ければ栄養不足になり体質の弱い犬として一生を送ることになります。
早くに母犬から引き離されショップのショーケースの中で暮らすようになると<寝て><食べて>の繰り返し。太陽の光に当たることもありません。
本来、生後2〜3ヶ月までは兄弟たちと取っ組み合いをして骨格や筋肉を丈夫にしていくはずなのにショーケースの中で1匹だけで暮らす仔犬にはその経験がありません。
これでは体の発育にいいわけはありません。
早くに商品となった仔犬は心の発達にも影響が及びます。
母犬とのかけひきのなかで自然に離乳をしなかった仔犬や兄弟たちとのコミュニケーションの機会を奪われた仔犬は[自分]と[自分以外の者]の区別がなかなかできません。[自分]と[外界]の関係もよく理解できません。
そうなってしまって苦労するのは犬自身です。

まだお乳が必要な生後1ヶ月半未満の仔犬を母犬から引き離して売っているようなショップは仔犬が順調に育つかどうかなんて考えていません。考えているのは「早く売ってしまおう」ということだけです。そして、それを助長しているのが【幼すぎる仔犬を買う人】です。

仔犬を迎えようとする人は、少なくとも生後2ヶ月、できれば生後3ヶ月まで母犬や兄弟姉妹犬といっしょにいた仔犬を迎えることを考えてください。
適切に離乳した仔犬、兄弟たちと遊んで心身を鍛えた仔犬、初回ワクチンを済ませて健康に問題のない仔犬・・・そういう仔犬を迎えるのが犬自身にとっても飼う人にとっても幸せなことなのだと思います。
母犬をただの出産マシンにしないためにも、心身の成長に問題のある仔犬を増やさないためにも、早め早めに売ろうとするペット流通のおかしな現状を食い止めるには、仔犬を迎えようとする一人一人がペットブームの波に押し流されないようにするしかないと私は思うのです。

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