獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-200709-36

チョークカラー・首輪 犬の体への影響
投稿日 2007年9月11日(火)14時49分 投稿者 パールちゃん

チョークカラー・首輪の犬の体への影響について複数の獣医さんおよび文献をリサーチした飼い主さんから情報をいただきましたので抜粋して転載します。

●頚椎のズレ(獣医さんからの情報)
文献的なことではなく、アメリカで暮らしていた犬好きの人の本に書かれていたのですが。
その人はご友人がニューヨークの動物の救急病院の先生らしいのですが、そのご友人の意見によると、大型犬の首のCTなどを撮ると頚椎がずれていることが多く、それはチョークカラーのせいではないかとおっしゃっていたと。
著者も、大型犬を飼育していてチョークカラーを愛用していて、何かのついでに頚椎を撮影することがあったときに
すこしズレがあったと書いてありました。
私自身も、あの細いチェーンで首に急激にショックを与えるのが頚椎にとって良いことをしているとはとても思えません。

●引きの強さと緑内障の関連(飼い主さんからの情報)
チョークカラーであっても首輪であっても、使い方によっては負荷がかかりますから、飼い主を引き回すような犬を作らないことがいちばんなのですが。
引きが強い犬は緑内障を引き起こしやすいという論文があります。犬の行動を調査したところ、引っ張りが強い犬が多かった、首を締め付けることで眼圧が高くなるのが原因ではないかという内容です。

【緑内障と首輪の関係】http://www.jaaha.org/cgi/content/abstract/42/3/207?etoc
Journal of the American Animal Hospital Association 42:207-211 (2006)
© 2006 American Animal Hospital Association
Effects of the Application of Neck Pressure by a Collar or Harness on Intraocular Pressure in Dogs
Amy M. Pauli, DVM, Ellison Bentley, DVM, Diplomate ACVO, Kathryn A. Diehl, DVM, MS, Diplomate ACVO and Paul E. Miller, DVM, MS, Diplomate ACVO
From the Department of Surgical Sciences, School of Veterinary Medicine, University of Wisconsin-Madison, Madison, Wisconsin 53706.
The effect on intraocular pressure (IOP) from dogs pulling against a collar or a harness was evaluated in 51 eyes of 26 dogs. The force each dog generated while pulling against a collar or a harness was measured. Intraocular pressure measurements were obtained during application of corresponding pressures via collars or harnesses. Intraocular pressure increased significantly from baseline when pressure was applied via a collar but not via a harness. Based on the results of the study, dogs with weak or thin corneas, glaucoma, or conditions for which an increase in IOP could be harmful should wear a harness instead of a collar, especially during exercise or activity.

●眼圧(獣医さんからの情報)
緑内障とチョークカラーの関連についての論文は前述(上記の英文)の一件だけみたいです。
ちょっと科学的根拠としては薄いように思えます。

●引きの強さと緑内障の関連・2(飼い主さんからの情報)
実際に数値として検証した論文はこれが初めてだと紹介されていた動物病院もありました。
American Animal Hospital Association からもう少し詳しい記事を探してみました。
https://secure.aahanet.org/eweb/dynamicpage.aspx?site=media&webcode=prdetail&postKey=cf52c2f2-33b4-4aab-8045-b0a90ccf769c

●チョークチェーンについて(飼い主さんからの情報)
イアンダンバー博士らが作った団体であるイギリスのThe Association of Pet Dog Trainers では、No choke chains の誓約書を取ってしつけをしています。
イギリス http://www.apdt.com/
日本 http://www.japdt.com/about/apdt.html

イギリスでチョークチェーンを推奨している団体Institute for Animal Care Education が獣医師、犬種団体、RSPCAやトレーナー、ショップ、チェーンメーカーなどへ調査をした結果と考察を要約したものがあります。
【チョークチェーンの誤用】http://www.uwsp.edu/psych/dog/LA/hawgood1.htm
これによると誤用で引き起こされた疾患として次のものが挙げられています。
Injured ocular vessels (眼の血管の損傷)
Tracheal and oesophageal damage (気管・食道の損傷)
Severely sprained necks (首の捻挫)
Cases of fainting (気絶)
Transient foreleg paralysis (一時的な前足麻痺)
Recurrent laryngeal nerve paralysis (反回神経麻痺)
Hind leg ataxia (後脚機能傷害)

●眼圧(飼い主さんからの情報)
ネクタイをきつく締めすぎると眼圧が上昇し、緑内障が発生する危険性があるとの報告が、英国医学誌「British Journal of Ophthalmology」(http://bjo.bmj.com/)2003年8月号に掲載された。
報告の責任執筆者で、ニューヨーク眼科耳科病院のRobert Ritch博士は、日常の診察で「ネクタイをきつく締めている患者がいるのに気づき、ゆるめるとIOPが数ポイント下がった」ことが研究のきっかけとなったと述べている。
健康な男性20人と、緑内障の最も一般的な型である開放性緑内障患者20人を対象に研究を行った結果、ネクタイをきつく締めると、健康な被験者の70%、緑内障患者の60%で平均眼圧が上昇することが判明した。また、ノーネクタイ時と緩めた時に比べて、きつく締めた時では眼圧は2mmHg以上〜4mmHg以上の範囲で上昇していた。
この結果に対して、Ritch博士は「ネクタイが首の頸静脈を圧迫し、それが眼を含む全静脈系を圧迫する」と推測している。同博士は、緑内障患者ではネクタイを着用しないこと、また緑内障の有無にかかわらず眼圧測定時にはネクタイを緩めることを勧めている。
エール大学緑内障部ディレクターのGeorge Shafranoy氏は「ネクタイを締めることが緑内障の原因になることはない」としながらも、実際に首を圧迫すれば眼圧に影響を与えることは認めている。
http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?artid=1771792

●眼圧(獣医さんからの情報)
動物では眼圧を測るときに首を保定すると眼圧が上がるのは有名な話。
犬や猫では肩や首周囲を抑えるので、眼圧測定時には注意事項だと眼科のセミナーで聞いたことが有ります。

●補足「どうしたら犬がわかるようになるか」(飼い主さんからの情報)
多和田 悟さんの新書「犬と話をつけるには」を読めば、盲導犬を育てることも 家庭犬を育てることも、子供を育てることも、部下を育てることも基本は同じ
1.相手を信じること
2.相手から信用されること
即効性ではないけどどうして犬が言うことを聞かないのか、彼の持論「犬を科学する」ということがどういうことかがわかりやすいです。犬を知れば知るほど犬のことがわからなくなるとも。

「どうしたら犬がわかるようになるか」
犬をコントロールするのは、ジャンケンで相手がグーを出すとわかっていてパーを出すようなもの。

(部分抜粋)
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四つの「できない」理由
1.言われた言葉の意味がわからない(忘れた)。
2.どうやってそれをしたらいいかわからない。
3.聞こえなかった。
4.聞く状態になかった。

理由がわかれば対処は簡単。
3.聞こえなかった、の場合は、はっきりと犬にわかるように言い直します。
4.は餌の匂いがするなど、犬が何かに気をとられているので、その原因を排除します。
1と2.の場合は、もう一度何をすべきか伝えて、それができるようになるまで体験させ、「グッド、グッド」とよく褒めてやりましょう。グッドやNOを使う時に気をつけること。グッドは多用しても(効果は薄れますが)、NOの多用は害にしかなりません。NOで厳しく躾ける教えて良いのは、絶対にしてはいけないいくつかの禁止事項、例えば人に対して攻撃的な態度を取る、犬の命に関わる拾い食いなどを行った場合だけです。NOを連発すると犬はNO慣れしてしまい、「また何か言っている」程度の反応しかしなくなってしまいます。(以下省略)
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