獣医師広報板ニュース

ネコ掲示板過去発言No.1200-200005-80

田舎暮らしの 老人と犬
投稿日 2000年5月28日(日)03時56分 NOKO

昨年の十月、ある里親募集のHPで縁あった小型犬を実家の両親に託しました。
10数年一緒に暮らしてくれた猫が亡くなって、1年数ヶ月。
親と次に迎える動物どちらが先に逝くかを考えると、なかなか踏み切れなかったのですが、
脚の悪い老人でもできるだけ負担が少ない、それでいて
ちゃんと毎日「散歩=歩く・家から外に出る」という老人に欠かせない日課を
一緒に楽しんでくれるパートナーとして、体高の低い5キロの犬を選びました。
子型犬を選んだのは両親にもしものことがあったとき、
狭い私の部屋でも引き取れる、という点もありました。
東京のマンション暮らしであったそのこは、今、
田舎の、家が5軒しかなく、その先は2キロ先まで民家のない山里で、
両親にとって欠かせないパートナーとなってくれています。

当然、町内に開業獣医師はいなく、
月に何度か巡回の獣医師が役場の畜産課にやってきます。
町から配られるカレンダーの毎月第3?曜日の欄に
「不要犬引取り日」と印刷されているような、ところです。
今でこそ、私が冷蔵庫に貼りつけておいたお約束事を実行している両親ですが、
私たち子供を育てるのに精一杯だった頃から祖父母の介護を終える頃までは、
しつけや病気についていろいろ勉強することはありませんでした。
田舎のある地域での、病気予防やしつけの意識の低さの改善は、
すこしずつ時間をかけて啓発していくしかないように思います。
獣医師もいない、本屋もなかなかない、テレビも数局しか映らない、
老人だらけの過疎の地で、街中に住む私たちの価値観や倫理観を、
いっきに押し付けるのは無理ですもの。
動物と向かい合う時間の余裕、本や人の話から勉強する気持ちの余裕、
年金の一部を動物に分け与えられる少しの経済的な余裕、
70過ぎて二人だけの生活が始まった両親には、
やっとそんな時期がきたんだと思います。

お世話になっている隣の町(約12キロ)獣医さんは、
東京から引っ越してきた方ですが、
田舎のくどい(笑)年寄り相手に世間話をしながら、
私がうるさく言うワクチンやフィラリア予防の話を、
丁寧にわかりやすく何度も教えてくれたそうです。
それを聞いた父は、ガソリンスタンドで出会った知り合いに話します。
そんな繰り返しで、一頭ずつでも…と願っています。

今、お互いを必要とし心の拠り所としてすごす、
老夫婦と無邪気で陽気な一頭の犬の姿は、なんというか、もう、感動ものです。
少し麻痺のある不自由な脚を引き摺って、2キロ先から毎日、
我が家の犬に会いに来るおじいちゃんがいます。
ポケットにお菓子を忍ばせているのはわかっていても、
「それをやらないでくれ」とは、いくら私でも言えないです(笑)。



少しずつ教えてあげることが、必要なんだと思っています。
気長に

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