獣医師広報板ニュース

ネコ掲示板過去発言No.1200-200302-41

せっかくですので、
投稿日 2002年12月28日(土)16時24分 プロキオン

までりんさんから、せっかく御提案がありましたので、その内容にも触れてお
きますね。

気を悪くされると困るのですが、最初にエムさんへのレスでホルモン処置につ
いても触れていますが、結論とすれば、あまり役に立たないので開腹した方が
早いと述べました。
どういうことかというと、血液中のエストロジェンの測定というのは、動物病
院ではできません。外部の検査機関に依頼する必要があります。これは人間の
方の検査機関になります。
この時、猫のエストロジェンというと色好い返事が帰ってくるとは限らないの
です。ホルモン関係の測定は展開剤や充填剤の関係でベースラインを安定させ
るのが面倒なのです。せっかく調整してあるものが汚れてしまうという感覚が
あるのです。また、測定してくれたところで、検査機関自体が猫の正常値をも
っていませんから、その値がどういう意味をもつのかコメントができず、参考
値にしかならないのです。
動物病院にしても、同一の猫の発情時の血液と非発情時の採血をしておかない
と比較しようがありません。非発情時の血液を他の個体で代用するなら、それ
は相当に多くの検体を用意しなくてはなりません。

次に 尿中のホルモンの検出ですが、までりんさんが言われているのは市販の
妊娠診断薬のことではないでしょうか?
あちらは、黄体ホルモンの検出が目的であって、ターゲットとするホルモンが
ことなります。ただ、尿中から直接卵胞ホルモンを検出することは可能であっ
て、サラブレッドやパンダ等では交配させる適期を調べる目的で実施されます
。ただ、例から想像できるように費用もかかりますし、お手軽にというわけに
はいきません。

エコーによる腹腔内の検査ですが、こちらは信頼性に問題があります。熟練の
方が実施したとしてもです。
卵巣という組織が元々小さい上に、残存卵巣ということになると、事実上は細
胞片なのです。どのくらいにまで大きく再生されているかということになりま
すが、本来の卵巣の大きさを超えるとも考えられません。
それにもう一つ、卵巣が存在していた位置にあるとは限らない問題があります。
卵巣靱帯であったり、腹膜に形成されていたりと場所が必ず同じ位置にあると
は限らないのです。これは、北海道のある先生が再生卵巣のついて発表した内
容にあったことです。
つまり、再生卵巣が存在していたとしても、エコーによって発見できる可能性
は高いとはいえないのです。エコーにかけてみるのはなんらかまわないのです
が、卵巣が存在しないことの証明にはならないのです。
例え、存在したとしても、卵巣の大きさであれば、消化管や他の臓器のシャド
ーの中に隠れてしまっていると考えられます。

では、臨床医に手はないのかというと、実は簡単な手段があるのです。

フェレットも猫と同じ交尾排卵動物で、エストロジェンの過剰によって重度の
貧血を起こして生命にかかわる疾患があります。
今回のケースのように避妊してあるはずなのに どうも発情しているように思
われるという例がしばしばあります。
フェレットでは、今言ったように生命に関わりますので、あるホルモン製剤(
HCG)を投与して、エストロジェンの分泌を抑制してみるのです。この処置
に反応があるようであれば、卵巣が残存していたと判断できるのです。
そして、貧血の改善情況を見て、適期に開腹して卵巣を除去する運びとなるの
です。
この方法が最初のレスの際、私の念頭にあった方法です。

しかしながら、フェレットのように発情を繰り返しても生命の危険がないので
あれば、開腹手術よりは注射で済ませたいと考えるのは、人の人情というもの
です。
簡単であると言うことには落とし穴もあります。このホルモン注射も繰り返し
ていれば、やはり良くありません。長期的に見れば、思いきって開腹手術を実
施する方が猫に対する侵襲はずっと少ないはずです。
そこで、確認したいのであれば、開腹することと述べた次第です。

卵巣の再生の調査をされた先生にしても、調査対象となった猫は、やはり1頭
1頭開腹して、どの位置にどのくらいの大きさのものがという確認をとってい
ます。

つまるところ、エムさんの内面のモヤモヤ度の問題なんです。避妊効果は確保
されているのでしょうから、鳴き声に対して、問題行動の1つと考えるか、医
療問題として考えるのかということになります。
その原因究明と解決に どこまでやるかということになるか、どこまでやった
らなっとくできるのかということに換言できるのではないでしょうか?




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